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「AFFAIR」
たとえ、これが恋だとしても・第Ⅰ部

新しい生活へ 【5】

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そう言われることは、なんとなく予想していた。それでも、実際に耳にしてしまうと気分は果てしなく落ち込む。どこかでガーンという音が響いたような気持ちになった亜紀は、ぼんやりとつぶやくだけ。

そんな彼女を励ますかのように、夏実が声をかけてくる。


「亜紀の気持ちも分かるわよ。でも、このことであなたのことを忘れるわけじゃないし、娘だと思わなくなるわけじゃない。それに、由紀子ちゃんにもちゃんと説明しているのよ。それって、これからも会えるっていうことじゃない。そうでしょう、竹原さん?」


どこか確信めいた口調で、夏実は竹原に問いかける。その様子に、彼は右手を胸に当てると深々と腰を折っている。


「当然でございます。この件につきましては旦那様のご意向がございます。お嬢様がお望みになられれば、里見様ご夫妻、佐藤様とお会いになることは可能でございます」

「慎一さんがそう言ったのね? だったら、私も信用する。あの人が美鈴のことを可愛がっていたのはよく知っているし、今まで亜紀と一緒にいられた最大の原因があの人だものね」

「お分かりいただけて、恐悦至極に存じます。それでは、改めましてお嬢様。私は一條家に仕える執事、竹原雅弥(タケハラマサヤ)と申します。本日より、お嬢様のお世話をさせていただきますので、よろしくお願いいたします」

「竹原さん、ですか?」

「竹原、とお呼びください。お嬢様」


突然、そう言われたことに亜紀は目を白黒させることしかできない。そんな彼女の隣にいる由紀子はこの状況を理解したのか、どこか楽しそうな表情になっている。そんな彼女の姿に、次に会ったときに訊かれることが分かったのだろう。どこかひきつった表情を浮かべている。

この場にいる誰もがそれぞれに思いを抱いていることは間違いない。そんな中、玄関先に止まっていた車に押し込められている亜紀。結局、彼女は住み慣れた家から新しい環境へと否応なく向かうしかないのだった。



◇◆◇◆◇



亜紀を乗せた車はどこまでも走っていく。一体、いつになったらゴールに着くのだろう。そんなことを思いながら、彼女は車の後部座席に座っていた。

この車、リムジンと呼ばれるもののようで、無駄に大きい。もっとも、乗り心地がいいことも間違いない。となれば、これは滅多にできない体験だ。そう強引に自分を納得させた亜紀は、この時間を楽しもうと思い始めていた。

そんな彼女の隣には、真面目な顔をした雅弥が座っている。彼が今までに話した以上のことを知っているのは間違いない。だが、それを口にするつもりがないということが亜紀には分かる。となると、彼女にできることは車の窓から外を眺めるということだけ。

しかし、ゴールが見えないということは、ある意味での拷問でもあるのだろう。結局、彼女は隣にいる竹原に疑問をぶつけることしかできなかった。


「竹原さん、いつになったら着くんですか?」

「竹原だ、と申し上げたはずです」

「かもしれません。でも、年上の人を呼び捨てにはできません」

「お嬢様はそのように思われますか。しかし、お嬢様のお立場で私たち使用人を呼び捨てにできないというのは、ある意味で問題なのですよ。もっとも、今までの環境も理解しておりますので、無理は言えませんね」

「何が言いたいんですか?」


自分の言葉が悪い、と言われているように感じる。そう思った亜紀が浮かべる表情はどこか不機嫌。そんな彼女の姿にフッと微笑を浮かべた雅弥は穏やかな調子で話しかける。


「そのような顔をなさらなくてもいいのですよ。お嬢様はお嬢様なのですから」


そんな彼の声の調子はあやすようにも、聞き分けのない子供をなだめているようにも聞こえる。そう思った亜紀の表情が硬くなっていくのは仕方がないだろう。それを横目で見ながら、雅弥は彼女にかける口調を変えようとはしていない。


「私はたしかに呼び捨てにしろと申し上げました。しかし、無理にそうなさる必要もございません。ただ、そうなさった方がこれからの生活を楽に過ごせるというだけのこと。私個人としては、今のお嬢様の感覚は非常に好ましいものだと思っておりますよ」


たしかに言葉は彼女の言い分を聞き入れたように聞こえる。だが、言外に毒を含んでいるようにも思える。となれば、『はい、そうですか』と頷くことが亜紀にはできない。結局、彼女は外の景色を眺めることしかできないようだった。

木々の間からこぼれる木漏れ日と木の葉を揺らすそよ風。それらに亜紀は癒される思いも抱き始めている。

そんな彼女の目の前に現れたどんでもないもの。

立派な噴水とそれに見合うだけのスケールを誇るお屋敷。これが個人の家だといってもいいはずがない。そんなことを思った亜紀は自分の頬をつねっている。


「お嬢様、どうかなさいましたか?」

「う、うん……竹原さん、あれって個人の家なんですか?」

「お嬢様が何を思っていらっしゃるか、分からないでもありません。しかし、あれが一條本家であり、お嬢様が今日から暮らすことになる場所でもあります」

「そうなんですね……」


できれば否定してもらいたい。そんな思いがあったのだが、相手にそのことが伝わっているはずもない。この事実に、亜紀はうなだれることしかできない。

なにしろ、今の亜紀の中にはこれからやっていけるのだろうかという不安だけが大きくなっているからだ。しかし、この思いは無視しないといけない。

走っていた車が玄関らしき場所に止まった。となると、逃げるということが選択肢の中にあるはずがない。


「お嬢様、お手をどうぞ」


そう言いながら差し出される雅弥の手に亜紀は自分の手を重ねている。この展開はどうにも居心地が悪く、顔が赤くなるのを抑えることができない。だというのに、相手は平然とした色を崩そうとはしていない。そのことにも気が付いた亜紀は、小さくため息をついていた。


「どうかなさいましたか、お嬢様」

「別に……なんでもないです」



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