「FABLE」
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ある午後の日

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「アロン、どこにいるの?」


明るい可愛らしい声があたりに響いていた。その声が呼んでいた相手はクスリと笑うとそれにこたえている。


「こちらですよ、シンシア。どうかしましたか?」

「アロン、捜したのよ。もうすぐ、ジョンとリンダが来る頃なのに」


ちょっと拗ねたような顔をしているシンシアの様子にアロンは思わず笑いだしていた。そのことに彼女はますます拗ねてしまっている。口をとがらせ、プイッと横を向いている。それでも、アロンの反応が気になるのか彼の表情を盗み見るようにもしているのだった。そんなシンシアの様子にアロンはおかしさを堪えることができないようだった。彼は『わかっている』というような顔で、シンシアの額をコツンと小突いていた。


「何をするの、アロン」


急に額を小突かれたことにシンシアがムッとした顔をしている。その彼女の様子をアロンは暖かいまなざしでみつめているのだった。そんな彼の視線を感じたのだろう。シンシアはどうかしたのかというような表情を浮かべている。


「アロン、どうかしたの? なんだかおかしいわ」


今まで、こんな表情でみつめられるということを経験していないシンシアはドギマギしたようにそう言っていた。


「ねえ、準備しておくものもあるんでしょう? ジョンたちが来てからじゃ間に合わないんじゃないの?」


今のどことなく気詰まりな雰囲気から逃げたくなったのだろう。シンシアは視線をキョロキョロさせながらそう言っている。今日、神殿にやってくるといっているのは若い夫婦。彼らは生まれたばかりの子供の名付け親になってほしいとアロンに頼んでいるのだった。そのことは神殿を預かる神官ならば当然の役割である。快く承諾したアロンは、二人が来る時間もわかっているはずだったのだ。それにもかかわらず、子供の名付けをする準備をアロンはしようとしていなかったのだ。そのことを心配しているのに、という表情をシンシアは浮かべているのだった。そんな彼女にアロンは心配いらないというような表情をしている。


「大丈夫ですよ。忘れたわけではありませんからね」


そう言いながら、ようやく準備を始めているアロン。それをみたシンシアはやっと安心したような表情を浮かべているのだった。

窓からは暖かな陽射しが入ってきている。そこは神殿という厳粛な雰囲気がほとんど感じられない。田舎の村であるバローズの神殿はそういう場所でもあったのだった。



~Fin~







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