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「FABLE」
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風と銀の輪 【2】

 ←風と銀の輪 【1】 →ある午後の日
それは、彼女がアリステアの娘だというだけではない。アリアンロッドのもつ力の高さがそういう風に思われる一因だということをジェシカは知っているのだった。


「だけど、あんた以外の誰が風の長と契約するっていうのよ」

「ジェシカ……」


彼女の言葉にどう反論すればいいのかわからないアリアンロッドはそう呟くしかない。その彼女の目には川の水面を飛ぶように遊んでいる風の精霊の姿が映っているのだった。


「アリアン、どうかしたの?」


急に黙ってしまったアリアンロッドの顔をのぞきこむようにしているジェシカ。その彼女には精霊の姿をみることはできない。だから、彼女には水面を遊ぶ風の精の姿は感じることはできたとしても、現実のものとしてうけとめることはできない。


「ねぇ、何をみているの」


自分の声に返事もしないで、じっと水面をみているアリアンロッドの目に映っているものが何か。それはジェシカにはわかってもいることだった。彼女が自分との話の途中にぼんやりとしている時は決まってそこに風の精がいるのだ。そのたびに、どうして自分は精霊をみることができないのかとジェシカは思っているのだった。


「アリアン、返事しなさいよ」

「あ、ジェシカ、ごめん」


何度か声をかけられたことで、ようやく気がついた顔でアリアンロッドはジェシカの方をみている。そんな彼女の様子にジェシカは思わず肩をすくめているのだった。


「どうせ、そのあたりに風の精がいるんでしょう」

「え、えっと……」


どういう風に返事をすればいいだろうかと思ったアリアンロッドはどこかドギマギしたところがある。そんな彼女の顔をみながら、ジェシカはクスクス笑っていた。


「気にしなくていいのに。ねぇ、あたしにも見せてくれない?」

「ジェシカ……」


従姉の言葉にどうしようかと考えていたアリアンロッドは、にっこり笑うとジェシカに手をさしだしていた。


「いいわよ。手を出して」


そう言ったアリアンロッドは、まるで何かを感じとろうとするかのように目を閉じている。やがて、大きく息を吸った彼女はジェシカの手をしっかりと握っていた。


「どれだけ見えるかわからないわよ」


アリアンロッドのその言葉に、ジェシカは笑っているだけである。彼女がそういう風に自分を卑下したとしても、その能力には間違いがないのだ。このあたりで遊んでいる風の精たち。そのほとんどをみることができるのだろうと、ジェシカは期待しているのだった。

そして、その期待が裏切られるということはない。ジェシカは自分とアリアンロッドの前に広がる光景に、思わず息を飲んでいるのだった。


「アリアン、すごいわ」

「そう? そういえば、今日はいつもより多いかな?」


感嘆したように呟かれる言葉。普段、精霊をみることができないジェシカにとっては、この光景は驚くものでしかないのだろう。しかし、見慣れているアリアンロッドにしてみれば、風の精が遊ぶ姿はいつものものだったのだ。

もっとも、そんな彼女であっても、今日ほど精霊が沢山いるのを目にするのは珍しいといえる。どうかしたのだろうかと、彼女自身が首をかしげているのだった。


「ねぇ、アリアン。こんなに沢山の精霊って珍しいでしょう?」


今までに何度かアリアンロッドの助けで精霊を見たことのあるジェシカではある。しかし、その時にここまで多数の精霊はいなかったと思っているのだった。そんなジェシカの疑問に、アリアンロッドは首をかしげながらこたえていた。


「そうね。いつもはこんなにいないものね。そりゃ、風の精霊は気まぐれだから、こんなことがないって言い切ることはできないけど」

「アリアンでも知らないんだ。じゃあ、これって珍しいことなのね」

「あのね。あたしは見ることはできるけど、呼べないの。だから、珍しいも何もわからないと思うけど」


そう言うなり、アリアンロッドは握っていたジェシカの手を放している。彼女にそうされたことで、また精霊を見ることができなくなったジェシカはちょっと口を尖らせているのだった。


「何、機嫌を悪くしてるのよ。そんなだから子供だって言われるのよ」

「子供でけっこう。だって、あたしはまだ子供よ」


アリアンロッドはそう言って、拗ねたように頬を膨らませている。そんな彼女にジェシカはからかうような口調で声をかけていた。


「そりゃ、あんたは年だけみたら子供かもしれないわよ。でも、あんたがもってる力は一族の誰よりも強いじゃない」

「そんなことないわよ」


拗ねたようにそう言い放つアリアンロッド。そんな彼女を諭すようなジェシカの声が響いている。


「伯父様だって、それを知っているから安心して一族を出たんじゃない」

「さっきから言ってるじゃない。父さんはまだ一族の長だわ」


ジェシカの言葉に拗ねたようなアリアンロッド。そんな二人をからかうように風が吹いている。二人の髪をサヤサヤ揺らすそよ風。その風に何かを感じたのか、アリアンロッドはあたりをキョロキョロながめている。


「アリアン、どうかしたの?」

「うん……ちょっと、気になるのよね」


自分が気になることがなんなのか、アリアンロッドは言葉にできない。それでも、なんとかして言葉にしようとするかのように考え込んでいる。


「アリアン、何を考えてるの」


黙り込んでしまったアリアンロッドをジェシカは気にしたような顔でのぞきこんでいる。その彼女がいつもと違う顔をしていることにジェシカは敏感に気がついているのだった。


「あんたがいまだに精霊を呼べないことを気にしているのは知っているわよ」


アリアンロッドの悩みを知っているジェシカは気軽な様子でそう言っている。


「でも、あまり気にすることないじゃない。あんたには、十分に才があるんだから。精霊を見ることのできないあたしに見せてくれるのよ。そんなこと、力がないとできないはずだわ」

「そういうものかしら?」


アリアンロッドは、ジェシカのその言葉にもどこか投げやりな返事をしている。しかし、彼女はそのことを気にしてはいない。自分の思っていることをハッキリと言葉にしていっている。


「自信をもちなさい。今のあんたに必要なのはそれだと思う」

「そんなに簡単にいわないでよ」


他人事だから、そんなに気軽に言えるのだといわんばかりのアリアンロッドの表情。しかし、ジェシカが一族のはみ出しっ子と言われていることを思い出した彼女は、思わずジェシカの顔をまじまじと見ているのだった。


「どうして、そんなに自信もっていえるの。あんたは、魔法は使えないじゃない」


アリアンロッドのその言葉に、ジェシカは笑いながらこたえているのだった。


「そうよ。あたしは魔法は使えないわ。だから、見えるものもあると思う。それに、一族の他の人はあんたにこんなこと言わないもの」

「あたしに何か言って、父さんの耳に入るのが怖いもんね」


そう言うとアリアンロッドは思わずため息をついている。そんな彼女の後ろに回ったジェシカは、そんな彼女を背後からしっかりとだきしめているのだった。


「伯父様は一族の精神的な長だもんね。でも、それがあんたに引き継がれるのもわかってるんでしょう」

「それはそうだけど……」


ジェシカの言葉に返事をするアリアンロッドの声は、どこか元気がないように聞こえる。そんな彼女を励ますようにジェシカは言葉を続けているのだった。


「あたしに魔法は使えないわ。それは仕方のないこと。でも、あんたのことを支えたい。あんたなら大丈夫。自信をもたなきゃ」

「でも、ジェシカ。あたし、怖いのよ」


聞こえるか聞こえないかの声。それは、誰にも言うことのできないアリアンロッドの本音だったのだろう。それを耳にしたジェシカは、信じられないといった色をその顔に浮かべている。


「怖いって……」


アリアンロッドが洩らした言葉に驚いたジェシカは彼女の顔を自分の方に向けていた。そこに宿っている表情はたしかに彼女の『怖い』という言葉を裏付けるものでしかない。


「アリアン、そんな顔しないで。あんたがそんな顔する必要ないじゃない。あんたは誰よりも力があるんだから」

「それが怖いのよ。もし、魔法が失敗したらどうなる? 術者に跳ね返るのはわかっている。でも、それ以外に影響でるかもしれない」


アリアンロッドのその声にジェシカは返事ができない。それは、自分が何の力ももっていないと卑下するところも原因だったのだろう。そんなジェシカの様子に気がついているだろうに、アリアンロッドは堰を切ったように、自分の思いを吐露しているのだった。


「あたしたちの使うのはただの魔法じゃない。風という自然そのものよ。制御できなかったらどうなるかなんて、考えるまでもないでしょう」

「それはそうかもしれないわ。だからこそ、一族のみんなは契約した精霊しか使えないじゃない」


ジェシカのその言葉にアリアンロッドはまた、黙り込んでいる。じっと何かを考え込んでいるような様子。そんな中、やがて彼女はポツンと呟いているのだった。


「あたし、自分の力も怖いのかな?」


アリアンロッドのその言葉にジェシカは返事をしようとはしない。それは、アリアンロッドが返事を求めているわけではないということをジェシカが感じているからだったろう。


「ジェシカ、あたし、ほんとにできるかな? 精霊の主に相応しいだけの力があるかな?」

「当たり前じゃない」


アリアンロッドの不安を打ち消すようなジェシカの力強い言葉。


「あんたなら大丈夫」


自分を励ますジェシカの言葉。そこに含まれている思いを感じたのだろう。アリアンロッドは大きく息を吸っているのだった。


「あんたがそこまで言うなら、もう一回、やってみる」


そう言うなりアリアンロッドは地面に魔法陣を描いていた。そんな彼女の行動を興味深そうにながめているジェシカ。


やがて、陣を描き終わったアリアンロッドは呼吸をゆっくりと整え、召喚の呪文を唱えている。


「速駆けの兄弟よ。その背に翼もつものよ。我が声が聞こえるならば集うがいい。我はそなたたちと契りを交わすことを望むものなり」


低いがしっかりとした声が朗々と流れている。どうなるだろうかと固唾をのんでいるジェシカの前で、アリアンロッドの体がフワリと浮き上がったようだった。


「アリアン、凄いじゃない!」


彼女の声にビックリしたのかアリアンロッドは地面に落ちている。そのことで、したたか腰を打ちつけた彼女はジェシカを睨みつけていた。


「いった~い。急に大きな声、出さないでよ」


そんなアリアンロッドの耳に今まで聞こえなかった楽しそうに笑う声が聞こえていた。


「ほんとに楽しいわね。あなたって、見ていて飽きないわ」

「何ですって!」


バカにされたと思ったアリアンロッドは、そう叫んでいる。ジェシカはわけがわからずにポカンとしているのだった。


「次の長を認めるわ。銀の輪をもつ娘」

「そ、それって……」


精霊が自分を認めたのだということに気がついたアリアンロッドは思わず、目を丸くしていた。


「もっとも、まだ半分だけどね。あなたって見ていて面白いもの」

「バカにしてるの?」


思わず、苛々したようなアリアンロッドの声に相手は調子を変えることなくこたえていた。


「私はウェンディよ。この名前を知ったことで、あなたは私の主になるわ」


では、この相手が風の王かとアリアンロッドはマジマジとみている。しかし、どう考えても遊び相手としてしか認められていないということに、彼女はすっかり頭を抱えていた。そんな彼女の困惑を気付いていないジェシカの声。


「アリアン、認められたの? やっぱり、あたしの言ったとおりじゃない」


みえないくせになぜわかるのだろうと思いつつ、ジェシカに事情を説明するアリアンロッド。彼女が風の王であるウェンディに正式に認められるのは先の話なのだということを。なぜなら、彼女はまだまだ殻を破りきれない雛だから。



~Fin~







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