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「FABLE」
Short

Debutante

 ←白の女王 →二人でお茶を
銀の月。この時は社交界が一際、賑やかになる。

理由は簡単。その年に社交界デビューする者たちのお披露目という意味合いがあるからだった。

男であれば16歳。女は14歳を迎える年の銀の月。その最後の3日間は王宮の大広間で舞踏会が開かれる。

これに招待されるのは一種のステータス。貴族の子弟は当然であるが、それ以外にも豪商やギルドの関係者など有力な者たちも招かれる。

これは毎年の恒例行事である。しかし、今までそのような機会のなかった者たちには緊張を感じるものでもあった。

そして、それは宮廷であっても同じことだろう。いや、それだからこそ緊張を感じているのかもしれなかった。

なぜなら、このお披露目が終わると成人として扱われる。華やかな社交界での位置付けがこの時に決まるともいえるのだ。宮廷に伺侯する貴族の家柄の者であれば、そのことがどれほど大切かわかっている。そして、それ以上の期待と不安を感じている者が宮廷には存在しているのだった。


「アルディス、そんな難しい顔をして。一体、どうしたんだい」

「お兄様……」

「それは、今度のお披露目の時のドレスだろう? お前によく似合うだろうね」


アルディスの前に置いてあるのは、白いシンプルなドレスと可愛らしいティアラ。それは、お披露目の舞踏会では誰もが身に着けるもの。

アルディスはこの国の王女ではある。だが、だからといって特別扱いはない。たしかにいろいろな公式行事に姿をみせ、華やかな彩りを添えてはある。しかし、その彼女も銀の月のお披露目では他の貴族の令嬢たちと同じ立場になるといえるのだった。


「しかし、父上も何を考えておられるのか。僕の時は別にされたというのに、どうして、お前は他の者たちと一緒なんだ?」

「当たり前でございましょう。お兄様は立太子の儀式もございましたもの。そのお兄様と同じというわけにはまいりませんわ」

「お前はそう言うがな」


ある意味で妹を溺愛しているともいえるアルフリート。彼にすれば、その妹が他の貴族の令嬢と同列のお披露目になるのが辛抱できないようだった。

しかし、アルディス自身はそのことを気にはしていない。彼女はもっと別のことで不安になっているのだった。


「お兄様、わたくしは気にしていないのです。ですから、お父様を困らせるようなことはなさらないでくださいませ」


小首をかしげながらそう言っているアルディス。彼女のそんなお願いにアルフリートが逆らえるはずもない。しかし、そうであっても、彼は妹の不安げな表情が気になって仕方がないのだった。


「わかったよ。お前がそこまで言うなら、そうするから。それよりも何か心配ごとがあるんじゃないのか?」

「あら、お兄様が心配なさるようなことはございませんわ」


アルフリートの問いかけに、たいしたことではないという顔をしているアルディス。しかし、彼女のその言葉で引き下がるアルフリートではない。彼は心配そうな表情で妹の顔をみているのだった。


「今のお前の顔をみていたら、心配もしたくなるよ。なんだか、悩んでいるようにみえるからね」

「お気にかけてくださって、ありがとうございます。でも、本当に何でもないんですもの」


そう言うとアルディスはこの話は終わり、という顔をしている。しかし、アルフリートにはそれで終わり、と簡単には片付けられないようだった。

彼は妹の金髪に指を絡めながら、その表情をうかがっている。兄のそんな調子にアルディスの方が白旗を上げていた。彼女はため息をつきながら、答えるしかないようだった。


「ちょっとだけ、不安なことがありましてよ」

「そうだろう。そうだと思った」


アルディスの返事に納得した様子のアルフリートはそう言っている。そんな彼の様子にまたため息をついたアルディス。彼女は自分が気にしていることを話すまでは兄の質問責めにあうことに辟易していたのだろう。しかし、黙っていても埒が明かない。彼女は言葉を選ぶようにして、口を開いていた。


「わたくしと踊ってくださる方がいるか、とても不安ですの」

「えっ?」


アルディスの言葉にアルフリートは思わず目を白黒させていた。自慢の妹であり、この国の王女でもあるアルディスがそんなことを心配しているとは、思ってもいなかったのだろう。彼の顔には不思議なことをきいた、という色しか浮かんではいなかった。


「どうして、そんなことを。お前と踊りたくないなんていう者がいるはずないだろう」

「そうでしょうかしら?」


兄の励ます言葉もアルディスの耳には入っていないようだった。彼女はボンヤリとした表情で、ドレスを眺めている。


「だって、どちらのご令嬢も素敵な方ばかりですわ。わたくし、それが不安ですの」

「お前が気にすることはない。お前ほど可愛らしい者はいないんだよ」

「お兄様はそうおっしゃいますが……」


兄の励ます言葉がアルディスにはどこか白々しいものに感じられるのだろう。ちょっと拗ねたような様子でアルフリートの顔をじっとみている。そんな妹の髪をなでながら、アルフリートはニッコリ笑っているのだった。


「考えてもごらん。お前にかなうような令嬢がいるはずもない。お前は自信をもっていればいいんだよ」

「それは、わたくしが王女だからですか? わたくし、そんな理由で踊りの相手をしてほしくありませんわ」


アルフリートの言葉にアルディスは思わず反論している。そんな彼女に彼は驚いたような顔をしているのだった。


「お前が王女だからじゃないよ。お前が誰よりも美しいからじゃないか」

「お兄様……」

「ほら、鏡をよく見てごらん。お前に夢中にならない者などいるはずがない。心配することなんかないんだからね」


アルフリートのその言葉に、アルディスは答えようとはしない。しかし、彼の言葉には当然の部分がある。鏡に映っているのは、まだ子供っぽさを感じさせる部分もあるが、美少女としかいえない姿。絹糸のような金の髪と澄み切った青い瞳は見る者を夢中にさせる力は十分にあるだろう。

間もなく開かれるお披露目の舞踏会でアルディスが主役になるのは間違いない。しかし、当の本人だけが言い様のない不安を感じているといえるのだった。


「アルディス、そんな顔をするんじゃないよ。お前の魅力は誰もが知っているんだから」


アルフリートのその言葉にもアルディスはうなずこうとはしていない。そんな彼女の様子にアルフリートもお手上げという表情を浮かべていた。


「僕がこれほど言ってもわからない? そりゃ、お前が不安に思うのはわかっているよ。今までは公式の場に出たとしても子供だという扱いだったからね」

「お兄様、わかってくださったのね」


アルディスがお披露目の舞踏会に感じている不安。それをようやくアルフリートも気がついたのだろう。妹にかける言葉は同じものでも、その調子は違っている。そして、アルディスも敏感にそれを感じたのだろう。先ほどまでの不安げな表情が少し明るいものになっていた。そんなアルディスの顔をアルフリートは満足げな表情で眺めている。


「そう。その顔だよ。それでこそ、僕の自慢の妹だよ。そして、そうやって笑っているお前は誰よりも綺麗だよ」

「お兄様、わたくし、そんなに綺麗? お兄様がそこまで自慢してくださるのに相応しい?」


アルフリートの言葉の端々からそのことは簡単にわかる。それでも、あえて確かめるような素振りをアルディスは浮かべている。そんな彼女の問いかけにアルフリートは笑いながらこたえていた。


「僕が言うのが信じられない? でも、お前は本当に綺麗だよ。このドレスだって絶対に似合う。だから、自信を持てばいいんだよ」


浴びせられるようにかけられるアルフリートの賞賛の声。それを聞いているうちにアルディスも少しずつ安心したのだろう。先ほどまでの不安を浮かべていた表情が明るいものになっている。


「ありがとうございます、お兄様。わたくし、不安でしたのよ。でも、お兄様と話している間に気持ちも楽になりましたわ」

「本当かい? だったらよかった。そうだ。お披露目の舞踏会では、僕がエスコートしてあげようね」


アルフリートのその言葉にアルディスはすっかり驚いていた。王太子である兄が舞踏会の会場に来るのはわかる。しかし、その彼が特定のパートナーを選ぶとは考えてもいなかったのだ。


「お兄様、そんなことをして大丈夫ですの? そりゃ、お兄様のエスコートがあれば嬉しいことは間違いございませんが……」

「だったら、問題はないね。じゃあ、舞踏会のパートナーは僕だよ。約束したからね」


念を押すようにそう言ってくるアルフリート。そんな彼の様子にアルディスは思わずクスリと笑っている。先ほどまで感じていた不安もどこかに消えたような明るい笑顔がそこには浮かんでいる。


そして――。


銀の月に開かれる舞踏会は、華やかにその時を迎えようとしているのだった。

この日は地位も身分も関係ない。貴族であろうが平民であろうが招待された以上は同じように扱われる。つまり、いつもであれば地位や身分に合わせて用意される控室というものも存在しない。令嬢たちは会場となる大広間とは別の広間でお互いの様子をうかがってもいるのだった。

そんな中で、誰よりも目を引く存在。それがアルディスなのは当然かもしれなかった。誰もが同じようなドレスとティアラをつけていても、身にまとう雰囲気は隠すことができない。控室となっている広間は彼女を中心とした輪ができているともいえたのだろう。


「そろそろ、お時間でございます。皆様方、ご準備の方はよろしいでしょうか」


今回の舞踏会の進行役が告げる声。それを耳にした令嬢たちはそれぞれのパートナーのもとへと一目散に駆けていく。もちろん、その中にはアルフリートの姿を捜すアルディスも当然いた。そんな彼女の姿をみつけたアルフリートはスッと手を差し延べている。


「やっぱり、お前が一番だよ。さあ、行こうか。なんといっても、先頭はお前だからね」

「あら、どうしてそうなりまして? この舞踏会は地位も身分も関係ありませんでしょう?」


そう言って口を尖らすアルディスをアルフリートは優しいまなざしでみつめていた。


「地位も身分も関係ない。でも、お前は銀の月、1の日の生まれだよ。それに僕のエスコートだ。それくらいの特権は許されるだろう」


そう言って、誇らしげにアルディスの手を取るアルフリート。いかに、この舞踏会が誰もが同じというものであっても、王太子の存在は無視できない。

彼のことを知る貴族たちは一斉に膝を折っている。そして、彼らの目はアルディスにも釘付けになっていた。彼女自身は不安に思っていたのかもしれないが、それは杞憂というものだったのだろう。彼女の社交界デビューはこれ以上のものはないというくらいに大成功をおさめていた。

入れ替わり、立ち替わり彼女にダンスを申込んでくる人々。その日、アルディスはクタクタになるまで踊り続けているのだった。そして、そんな彼女のそばには兄であるアルフリートが見守るようについていた。それは、妹を心配する兄の様子と周囲には微笑ましく映る光景といえるものだった。



~Fin~







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