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「FABLE」
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白の女王

 ←ある魔導師の選択 →Debutante
世界には名の知られた魔導師が何人かいる。

その中でも一番有名な人物といえば、『グローリアのアリステア』だろう。

風使いの一族の長でありながら、王家に仕える魔導師の統括をするように求められている。長の地位を娘に譲り、その任を受けた彼の実力は、誰もが認めるものだろう。

そんな彼と同じように人々の口にのぼる名。それが『リンドベルグのゾフィー』

彼女はアリステアのようにどこかのお抱えの魔導師というわけではない。しかし、ある意味では高名ともいえる存在である。なぜなら、彼女の一族が有名な白魔導師の一族であるからだった。

優秀な白魔導師を多数、輩出していることで知られるリンドベルグ。彼女はその一族の長であり、その能力の高さも一族内外に知れ渡っているものだった。

どの国にも属さない、深い森の中。その中に居を構えるリンドベルグ一族だが、閉鎖的というわけではない。彼らはその能力を必要とする人々に『依頼料』という名の代価を求めるとはいえ、手を差し伸べる。それが、この一族の生活の術であるということを人々は知っている。

市井に転がっている魔導師には本物とも偽者ともつかないものが多い。しかし、必ず結果を出すリンドベルグ。この一族は各国の王侯貴族、大商人など富裕階級には重宝な存在であるのだった。そんな中、ある一通の依頼書を見たゾフィーはため息をつきながら、どうしようかと考えているようだった。


「ゾフィー様、どうかなされましたか」


長が珍しく考え込んでいると思った一族の一人が声をかけている。それに対して、彼女は手をヒラヒラ振って、なんでもないというようなふりをしている。しかし、その視線が依頼書から離れない。もっとも、彼女のそんな様子に気がついていても、誰もそれ以上は声をかけないようだった。


「こことは繋がっていた方が得策よね。となると、誰を出すか……今のところ、条件にあいそうなのは……」


彼女のその呟きは外に漏れることはない。そして、周りも彼女が何かをつぶやいていることに気がついていても、あえてたずねるということはしない。

長であるゾフィーがその考えをまとめるために独り言を呟くのは一族の中では常識となっている。以前、うっかりとそれに対応した者が彼女の容赦ない毒舌の被害にあったというのは有名な話。それ以来、彼女の独り言に付き合うような暴挙を犯すものは一族には存在するはずもなかったのだ。

結い上げられた髪は黒く艶やかなもの。そして、腕に何本もはめられた細い腕輪が触れ合ってカチャカチャと涼やかな音を立てている。いかにも女王然としたその態度と容貌から彼女は『白の女王』とも呼ばれているのだった。


「やっぱり、ここはあの子よね。うん。それしかないわ」


ようやく考えが固まったのか、ゾフィーの顔色は晴れやかなものになっている。依頼書をもう一度読み直した彼女は、ある部屋へと向かっているのだった。


「ウィア、ちょっと頼まれてくれないかしら」


ゾフィーのその声に、部屋の中にいたウィアはあからさまに嫌そうな顔をしている。もっとも、ゾフィーはそんなことを気にもしていない。彼女は自分の用件をさっさと伝えているのだった。


「そんな顔してもダメよ。この依頼書を読んでちょうだい。そうね、準備があるからすぐは無理だろうけど、2、3日中にはあちらに行ってちょうだい」

「急に何を言い出すんです。か、……」


ウィアの最後の一言にゾフィーの目がキラリと光ったようだった。そして、彼女はグイッとウィアに詰め寄っている。


「今、何をいいかけたのかしら? はっきりおっしゃい」

「別に何も言ってませんが。気のせいでしょう」


ゾフィーは自分の母親であることに間違いない。しかし、今の彼女は長の顔をしている。そのときに『かあさん』などと呼んだりしたら、どんなことが待っているか。それは彼も彼の兄弟姉妹もよく知っていること。それだというのに、うっかりとそう呼びかけたウィアは冷や汗を流しながら誤魔化そうとしているのだった。


「えっと、何をすればいいわけですか」


ウィアが必死で誤魔化そうとしていることはゾフィーには簡単にわかること。しかし、それを突っ込むよりも、彼が素直にそう言っている間に今回の依頼を任せてしまったほうが得だということを彼女はよく知っている。ゾフィーは身内からは『悪魔の微笑』とまで恐れられている満面の笑顔でウィアに対しているのだった。


「それを読んでくれればわかるけれども? 一応、説明しておくわね。ヴェネーレからの依頼よ。あそこの第二王子のお守りがほしいんですって。期間は指定されていないけれども、あそことは繋がっている方がなにかと得だから」

「だからといって、どうして僕が……」


いかにも不満足です、といった表情を浮かべているウィア。そんな彼にゾフィーの表情は変わることがないようだった。


「一族の他の者でもいいわよ。でも、王家と繋がることができるんですもの。やはり、敬意を払って、一族の直系を出すべきでしょう」

「だから、どうしてなんです?」


繰り返されるウィアの質問に、ゾフィーは呆れたような顔でこたえていた。


「何度も言わせないの。あそこの第二王子はあなたと一番年が近いじゃない。テレーゼを出すわけにはいかないし、フィルは他の依頼があるわ。これは決定よ。つべこべ言わずに用意をしなさい」


そう宣言したゾフィーの姿からは、迫力しか感じられない。こうなったら、素直に言うことをきくしかないとウィアはうなだれてしまっているのだった。

そんな彼の側にクスクスと笑いながら近寄ってくる姿がある。


「ウィアも馬鹿なことをしたわね」


その声に、何か反論しようとした彼であるが、それをする前に相手の声が続いているのだった。


「母様が長の顔をなさっているときにあれはないでしょう」

「気がつかれたと思いますか、姉さん」

「当たり前よ。だから、あそこまで威圧的だったんでしょう」


そう言ってコロコロと笑い出す姉のテレーゼに、ウィアは思わず不満をぶちまけていた。


「気がついていたんなら、助け舟を出してくれてもいいじゃないですか」

「無理よ」


キッパリと言い切るその姿。それがどことなく母親のゾフィーに似ているような気がしたウィアは思わず頭を抱えていた。


「姉さん、その言い方はないでしょう」

「だって、考えてみてよ。今回の依頼主はヴェネーレでしょう? 母様が断るはずないじゃない。あなたの失言で話が早くなったと喜んでいるだけよ」


そう言うとテレーゼは呆然としている弟をほったらかしにして母親の姿を捜している。そして、ゾフィーがお気に入りのテラスでお茶をしているのをみつけた彼女は安心した様子で近寄っているのだった。


「母様、どうしてウィアにあの依頼を?」


この場にいる時のゾフィーが長の顔をしていないことをテレーゼは誰よりもよく知っている。無邪気に声をかけてくる娘に、ゾフィーも笑顔でこたえながら、彼女の前の席につくようにとしめしているのだった。


「ウィアを外に出してやりたかったのよ」

「あら、そうでしたの?」


思いもしなかった母親の言葉にテレーゼは驚いたような顔をしている。そんな娘に紅茶を渡しながら、ゾフィーは言葉を続けていた。


「あの子はあのバカッタレによく似ているのよ。一つのところでじっとしている子じゃないわ。その点、フィルやあなたは安心なんだけれども」

「じゃあ、依頼主のところで拘束されるのはウィアには耐えられないんじゃありませんの?」


ゾフィーの言ったバカッタレが父親のことだとわかっていても、あえてそのことには触れようとしないテレーゼ。そんな彼女に、ゾフィーはゆったりとした調子でこたえていた。


「あそこの王子が一箇所で大人しくしているはずがないわ。だから、その王子のお守りとなれば、ウィアも一緒に動くでしょう」

「そうかもしれませんわね。でも、母様がそんなことを考えてるだなんて、ウィアは気がつきもしていないと思いますわ」

「かまわないわ。あなたはちゃんと知ってくれているもの。それでいいんじゃないかしら。でも、私がこんなことを言ってるなんて内緒よ」


ゾフィーのその声に思わずテレーゼは笑い出している。それは、厳格な長という顔からはなれた彼女がこんなにも愛情豊かなのだということをテレーゼが実感として知ったからなのだろう。



~Fin~






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