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「FABLE」
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ある魔導師の選択

 ←若旦那の日常 【2】 →白の女王
ヴェネーレからグローリアへと続く街道はいろいろとある。

その中の一つ。今では滅多に使う者のいない旧街道に珍しく人の気配がしていた。それは、青年という言葉が似合いそうな二人連れ。彼らは『寂れた』という表現がピッタリな街道を気にすることもなく進んでいるのだった。

この街道は自由国境の村であるルディアを抜けてグローリアの王都に続いている。しかし、時の流れというものは残酷でもある。かつては賑わっていた街道も、いつの頃からかすっかり荒れ果てたものとなっていた。

今では手入れもされていない街道。それでも、かつての名残を残しているのだろう。磨り減った物になってはいても、石畳がかろうじて往時を忍ばせている。


「まだ機嫌を直さないのか」

「別に機嫌が悪いわけではありません」


片方の問いかけに木で鼻をくくったような返事をしている相手。その視線は冷ややかともいえそうなものである。

しかし、その視線を向けられている相手は、そんなことを気にしている様子はこれっぽちもない。自分たち以外の人影がないことに安心したような表情であたりをみている。その態度に、もう一人はすっかり呆れたような顔をしているのだった。


「こういう街道の方が危険なんですよ。わかっていらっしゃるんですか」

「それくらい知っているさ。だがな、この街道はそういった類いの報告がないくらい寂れているのも知っているだろう」

「それはそうですがね」

「まったく、ウィアは心配性すぎるんだ。まあ、おかげで助かってはいるがな」


その言葉にウィアと呼ばれた相手は返事をしようともしない。もっとも、彼のそんな態度は日常茶飯事なのだろう。互いのことを知り尽くしているような雰囲気が二人の間には漂っていた。


「それはそうと、そろそろ理由をきかせていただけませんか」

「理由? 何の理由だ?」


どこか人を食ったようなすっとぼけた様子にウィアは思わずため息をついていた。彼の態度は、それまでの穏やかな様子から相手の首根っこを掴みかねない勢いに変わっている。


「それも言わないとわからないんですか! 急に出かける。理由は後で話すと言われたんですよ!」

「ウィア、落ち着け。聞こえている」

「そうですか。では、キッチリと説明をお願いします。陛下もわたしが一緒だということで必要なものを出してくださっているのですから」

「どうして、そこで親父が出てくる」


ウィアの口から出た陛下、という言葉に相手はすっかりうろたえてしまったようだった。

それもそうだろう。彼はヴェネーレの第二王子であるカルロス。ある意味で恐いもの無しの彼ではあるが、さすがに父王が何を言っているのかと気にはしているようだった。

しかし、それでも強気な態度は変えようとはしていない。そんなカルロスにウィアはますます大きなため息で応えているのだった。


「どこに行かれるつもりかは存じませんよ。それでも、移動するのです。通行手形がいることはわかっていらっしゃるでしょう。それとも、それすら無しで強行突破されるつもりでしたか?」

「そ、そんなつもりは……」

「ほぉ~、ありませんでしたか。では、説明を。もっとも、わたしが納得できなければ、その場で強制送還ですよ」

「ウィア、何を言い出す!」


ウィアがサラリと告げた『強制送還』の一言。カルロスはそれに激しく反発していたが、ウィアは当然だろうという顔をしている。

これまで、この王子のお守りという役目を勤めてきた彼である。必要とあれば、脅しも辞さず、という面も持ち合わせているのだった。


「わかったよ、ルディアに行くんだよ」


どことなく不機嫌な声で目的地を告げるカルロス。それは、ウィアには予測のついていることでもあったろう。

なぜなら、この旧街道の続いているのがそのルディアである。しかし、理由がわからない。ウィアの視線がそれを問い質すようだと気付いたカルロスはしぶしぶ口を開いているのだった。


「怒るなよ、怒るんじゃないぞ」

「話をきくのが先です。つまり、わたしが怒るような理由だというわけですね」


カルロスの声に何かを感じたのだろう。彼の言葉に応えたウィアの周囲の気温が、一気に下がったようだった。

ウィアのそんな変化を敏感に感じたのだろう。カルロスの顔色も少し悪くなっている。しかし、ここで曖昧にすることをウィアが許すはずもない。カルロスは覚悟を決めたような表情を浮かべていた。


「お前だって、見ればビックリすると思うぞ」

「勿体ぶらずにサッサと話してください」


言葉遣いは相変わらず慇懃である。しかし、言葉には毒がある。そして、それに当てられたかのように、カルロスはしどろもどろになっていた。

ウィアがこうなったら、逆らうことは不可能。それはカルロスにもよくわかっていることだった。


「これが何かわかるな」


カルロスはそう言うと、懐に大切にしまっていた小袋をウィアに渡していた。一体、何が入っているのだろうと不思議そうな表情を浮かべているウィア。しかし、そんな様子も袋の中身をみた途端、吹き飛んでいるのだった。


「こ、これは……」

「わかっただろう。これがどうして流れてきたのか気になったからな」

「たしかにそうですが……」


そう言いながらカルロスに袋を返していたウィアはあることに気付いていた。


「理由は一応、了解いたしました。しかし!」


冷静に考えてみると、カルロスの行動がとことん考え無しにみえてくる。ウィアは額に青筋を立てながら詰め寄っているのだった。


「それならば、出発する前に一言くださればよかったのです」

「ウィア、そうはいうがな……」

「リンドベルグの力をお疑いですか。一族に声をかければ、わからぬことはまずありませんよ」

「それはそうなんだがな……」


ウィアの言わんとしていることはわかっている。それでも、どこか煮え切らない様子のカルロスがいるのだった。

そんなカルロスの様子を冷ややかにみているウィア。今の彼の正直な思いは、このまま回れ右で帰りたい、というところだろう。

実際、ウィアの足はその場で止まり、反対に向こうとしている。それをみたカルロスは慌てたように叫んでいるのだった。


「謝る! 勝手にやったこの件は俺が悪かったんだし。だけど、ここまで来たんだ。引き返すなんて言わないでくれ」

「これ以上、田舎道は歩きたくありませんよ」


冷ややかな調子でそう告げるウィア。彼はいつ、カルロスを引きずって帰ろうかと計算しているようだった。そんな彼にカルロスは言葉を続けている。


「そりゃ、リンドベルグに頼らなかったのは悪かった。だがな、お前のお袋に借りをつくりたくないんだ!」

「そんなに長が苦手ですか」


カルロスの言葉にウィアのため息はますます深くなっていた。たしかに、リンドベルグの長は一筋縄でいく相手ではない。それは身内である彼自身が一番よく知っている。

しかし、世界中に散らばる一族の動きはすべて長の元へと届けられる。だからこそ、なぜ頼らなかったのかという非難の色がその顔には浮かんでいるのだった。


「たしかにうちの長はあの性格ですよ」

「そうだろう。お前もいつも苦労しているって言っていただろう」


ウィアの態度に我が意を得たり、という顔のカルロス。そんな彼をみたウィアはすっかりあきらめたような表情を浮かべているのだった。


「本当に仕方のない人ですね。長に借りをつくりたくないだけで、勝手に動いているんですから」

「だがな。それもこれも、お前のお袋があんな性格だからだぞ」

「長はあれくらいでないとつとまりません。なんといっても、リンドベルグの一族は世界中に散らばっているのですから」

「それはわかっているんだがな」


そう呟いたカルロスの言葉にはどことなく倦怠感がある。そして、ため息をつきながら首をたれる姿に、ウィアは白旗をあげたようだった。


「わかりました。こうなったら、とことん付き合いますよ」

「本当か!」


ウィアのその言葉に喜色満面の顔で飛び付くカルロス。そんな彼の様子に、ウィアは仕方がないという表情を浮かべるしかないのだった。


「長に借りをつくりたくないのは、わたしも同じですからね。あの方は実の子供であっても容赦ないですから」


そう呟くと、ウィアも吹っ切れたようにカルロスの横に並んでいる。そんな彼の様子に、カルロスも安心したような表情を浮かべていた。


「お前がそう言ってくれて助かった。実は、ルディアの宿をお前の名前で押さえてあるからさ」

「何ですって!」


それを聞いたウィアの顔は、思いもよらぬことを言われたというようなもの。思わず、その場から引き返そうと本気で思ったのだろう。ためらうことなく踵を返すと、その場から去ろうとしている。


「ウィア、勝手にやったことは謝る。これからはしないから、今回だけは大目にみてくれ」

「そうですか? 本当に今回だけですか?」


ウィアの問いかけにカルロスは首をコクコク振っている。そんな姿に彼は最大級のため息で応えているのだった。


「今回だけですからね。今度、勝手なことをしたら、その場で強制送還ですからね」

「わかっている。そのかわり、俺にとことん付き合うんだな」

「仕方がないでしょう。貴方みたいな人を放置することの方が犯罪に思えてきました」


それは、彼なりの最終通告であり選択。

この瞬間、彼は一族に戻らず、カルロスに付き合うという選択肢を選んだともいえたのだろう。



~Fin~







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