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「DIVA」
呪歌と姫君

決断と決意 【1】

 ←呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】 →決断と決意 【2】
その翌日、ファクリスの王都はどこか騒然とした空気に包まれていた。いや、これまでにも貴族や豪商の屋敷に押し込み強盗が入ったことは何度もあるし、今回の事件も珍しいというものではない。しかし、たった一人の犯人が屋敷の使用人も気づかれることなく侵入し、主人夫妻を惨殺したという事実に人々は震えあがったのだ。そして、取り押さえられ役人に引き渡される時にその犯人が叫んだ言葉が、人々により一層の恐怖感を与えている。


「この屋敷には化け物がいる! 呪歌歌いだぞ! お前たち、それでも、平気なのか?」


その声は、人々から冷静な判断を奪ってしまうものでもある。彼らにとって『呪歌』というものは恐怖でしかないからだ。朝早い時間だというのに、人々は恐怖と好奇心からその屋敷を覗きこむことしかできない。


「ねえ、本当にこのお屋敷に呪歌歌いがいたの?」


おそるおそる訊ねる声があるが、それに応えられる者がいるはずもない。国王の信頼も厚い名門貴族であるザフィーラ家。そこに、人々を恐怖のどん底に落とすともいえる呪歌歌いがいるはずもない。

この屋敷はいつも明るい雰囲気に満ち溢れていたではないか。始終、小鳥が窓辺に遊びに来ていたのを誰もが知っている。呪歌というものは物を破壊するものであると思っている彼らにとって、それは絶対に信じることができない物だった。


「ねえ、誰かちゃんとした話を知ってる人はいないの? ザフィーラ家に呪歌歌いがいるなんておかしいじゃない。このお屋敷はご主人と奥方、それに可愛らしいお嬢さんの三人が暮らしていたじゃない。そりゃ、使用人もいたけど、その中にそんな恐ろしい力を持った人がいたの?」


先ほど問いかけてきた女が、またそう呟いている。もっとも、それに対する返事など期待はしていなかっただろうが、今回はそれに返事をする声が聞こえてきた。


「知らなかったのか? その娘が呪歌歌いだったのだよ」


どこか重々しいその声に、その場にいた誰もがハッとなったように声の方を振り向いている。そこにいたのはふくよかな体型をローブに隠した初老の男。ぼってりとしたその顔には朝の爽やかな風が吹いているにも関わらず、玉のような汗が浮かんでいる。それをハンカチで拭う手には何本もの指輪が嵌められ、それが朝日にキラキラと輝いていた。


「あ、あの……ということは、ここのお嬢さんのアフルさんが呪歌歌いだったんですか?」


おどおどした調子で女が相手に問い直している。その姿に、相手は鷹揚に頷くとハンカチを隠しにしまい、自信に満ちた口調で言葉を続けていた。


「その通りだ。実は、伯爵に何度も令嬢を保護させてくれとお願いしていた。しかし、伯爵はそれを頑強に拒まれた結果、呪歌の暴走という最悪の結果を招いたのだ」


その言葉を聞いた途端、人々の目には嫌悪感だけが浮かんでいる。それまで憧れをもって眺めていた貴族の屋敷が、一気に恐怖の対象となっていく。その表情の移り変わりをみていた相手はニッと満足げな笑いをその口元に浮かべる。

もう一押しすればいい。そうすれば、人々は一気に屋敷に向かって暴れ出す。そう思った彼は、舌で唇を舐めると新たな言葉を紡ごうとしている。その瞬間、怒号ともいえる声がその場には響き渡っていた。


「フレデリック、何をしている!」


その声と同時に現れたのは、吟遊詩人のギルド長であるクロード。普段は穏やかで人あたりのいい彼だが、今はまるで雰囲気が違う。彼はその場に人々が集まっていることも忘れたようにフレデリックのそばに詰め寄っていた。


「ク、クロード様……」


流石にギルド長の気迫には押されるものがあったのだろう。フレデリックはそれまでとは違う脂汗をその額に浮かべている。そのまま口をパクパクさせる彼に向って、クロードは言葉を投げつけていく。


「お前は一体、何をしようとしている。人々に世迷い事を吹き込んで、混乱させるつもりなのか?」

「そ、そのようなことはございません。それよりも、ザフィーラ伯が呪歌歌いをギルドに渡すつもりはないと明言していたことは事実ではありませんか」


冷や汗をだらだらとかきながらも、フレデリックは言葉を絞り出している。そんな彼の様子をクロードは呆れたような顔でみつめると、ため息を一つつきながら言葉を続けていた。


「たしかに、お前の言い分はわかる。だがな、それ以外にもお前の話を聞く必要ができた。何も知らない人々を不安にさせる暇があるなら、さっさとギルドに戻ってこい」


そう言い放った彼は、集まっていた人々の方をくるりと向いている。そこに浮かぶ表情は、いつもの穏やかな物。そのまま深々と腰を折ったクロードはどこか恐縮したような調子で人々に声をかけていた。


「このたびは、この者が馬鹿なことを申しました。しかし、伯爵様の名誉のために申しておきますが、あのお方は非常に胆力のある立派な方でした。たしかに、こちらの御令嬢は呪歌を操れた。しかし、そのことをご存知であっても、それを暴走させるつもりはないという気概も持っておられた。今回のことは、不幸な事故が招いた悲劇であり、令嬢の力は人に幸せを与える福音の声だということをご理解いただきたいのです」


クロードのその言葉に、人々は互いに顔を見合わせるだけ。それでも、彼の言葉にも一理あると思ったのか、その声に反論しようという声は上がってこない。それを見たクロードはホッと息をつくとフレデリックの首根っこを掴むと引きずるようにその場から離れていた。


「クロード様、何をなさいますか」


まさか、このような形で引きずられるとは思ってもいなかったフレデリックは何とかして自由になろうと身をもがくが、クロードはその手を緩めようとはしない。どちらかというと細身の見た目からは想像もつかないような力で、彼は恰幅のいいフレデリックをずるずると引きずる。

その顔に浮かんでいるのが怒りの形相になってきている。そのことに気づいたフレデリックは、これ以上の反抗が身のためにならないということを敏感に悟っていた。やがて、ギルドの建物の中に入った二人だが、クロードの機嫌はますます悪くなっていく。そのまま彼は長の部屋に入るとどっかと椅子に腰かけフレデリックを睨みつけていた。


「クロード様、何をそのようにお怒りになられているのでしょうか」


クロードが不機嫌になっている理由が分からないフレデリックはそう訊ねることしかできない。そんな彼に、クロードは不機嫌そのものといった調子の声で応えることしかしていなかった。


「お前、ハイドとかいう傭兵崩れを知っていたな。おい、今さら白を切るなよ。向こうはお前の名前を出してるし、お前があいつと繋がりがあったのもちゃんと知っているんだからな」


そう告げるクロードの瞳には、冷やかな色しか浮かんでいない。そのことに気がついたフレデリックは、どういって言い訳をしようかと必死になって考えていた。


「た、たしかにハイドのことは知っています。今までに、何度か表に出せぬ用事を頼んだことがありますから」


その言葉に、クロードは大きく息を吐くことしかできない。ギルドの長として立っている以上、彼が口にした『表に出せぬ用事』というものが歴然と存在していることを知っているからだ。この調子では、何度かハイドに邪魔だと思う相手を始末させている、と感じたクロードだが、今はそのことをとやかく言う時ではない。それ以上に大きな問題が目の前にあるからだった。


「ということは、今までにあいつと関わったことはあるが、今回のザフィーラ家の一件に、お前は関係していないと思っていいんだな」

「もちろんです。どうして、そのようなことを口になさいますか」


クロードの口ぶりからは、今回のことを自分と結びつけてはいない。そう思ったフレデリックは、これ以上クロードを刺激しないようにと下手に出る。その彼の目の前で、クロードは思いっきり机を叩きつけていた。


「白ばっくれるなといっただろう! お前がやったことは全部分かってるんだ!」


バンという大きな音が部屋に響き渡る。偶然、部屋の外を歩いていたギルドのメンバーが吃驚したように扉を細く開ける。それに対して、「今は入るな」とキツイ口調で止めたクロードは、ギリッと唇を噛みしめるとフレデリックを睨みつけていた。


「お前が素直に白状すれば、大目にみてもいいと思っていたんだがな」

「一体、何のことを仰っておられるのか……」


そう言いながらも、フレデリックは背中に冷たいものが走るのを感じている。この調子だと、クロードは事情を知っていたにも関わらず、知らないふりをしていたのだ。そう思ったフレデリックは、自分が取り返しのつかないミスを犯したことを悟っている。

このままでは彼の容赦のない糾弾しか待っていない。しかし、一度、白を切った以上、急に言葉を翻すわけにもいかない。フレデリックは額からたらたらと冷や汗をかきながら、どうやってこの場を切り抜ければいいのかということだけを考えていた。そんな彼に向って、クロードは淡々とした調子で言葉を続ける。


「夕べの夜会にザフィーラ伯夫妻が出席していることを傭兵崩れが知ることができるはずもないからな。間違いなく、誰かが情報を流したに決まっている。そして、誰も気づかないうちに屋敷に潜り込み、伯爵夫妻を殺害している。これは、間違いなく誰かの手引きがあったに違いない。たしか、ザフィーラ家にはお前の息のかかった相手がいたな」


その言葉に、フレデリックは何も応えることができない。そして、それこそが何よりの返事だということをクロードは知っているのか、そのまま話を続けている。


「返事はいらない。アリオンもそいつのことは気がついていたからな。そして、俺とお前がザフィーラ家を訪問した日から、アリオンがあの屋敷に滞在していた。屋敷の中の様子を俺が知っているのは、あいつからの報告もあったからだ」


その声にフレデリックの体がピクリと反応する。彼の言い方では、自分よりもアリオンの方を信用しているともとれる。そのことが我慢できないフレデリックは思わず声を荒げていた。


「クロード様、今のお言葉ではわたしよりもアリオンの言葉の方を信用なさっているように思われますが? 仮にもわたしはギルドの長老です。そのわたしよりも、あのような若造の言葉を信じるとおっしゃるのですか!」


感情をむき出しにしたフレデリックは、机に手をつくとクロードにグイッと顔を近づけている。その顔に光る汗をみたクロードは嫌な物を見た、というように顔をそむける。その姿にますますいりきたったようにフレデリックは言葉を続ける。


「わたしがどれほどギルドのことを考えているのかお分かりではないのですか。呪歌歌いはギルドに。これは、国王陛下もお認めになられていること。だというのに、ザフィーラ伯はいつまでたっても令嬢を我らに渡して下さらない。今回のことは、彼の自業自得ではないのですか?」


フレデリックのその言葉に、一気にクロードの機嫌が悪くなる。彼はもう一度、机を激しく叩くとフレデリックの胸倉をグイッと掴んでいた。


「それ以上、馬鹿なことを言うな。ザフィーラ伯がああなったのは自業自得だと? あれはお前がハイドにやらせたことだろう。たしかに、国王陛下は呪歌歌いのことはギルドに任せるとおっしゃられている。だが、あの令嬢はザフィーラ家の跡取りだ。仮にも貴族の次期当主を無理矢理、ギルドに所属させろとは陛下もおっしゃられないはずだ」



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