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「DIVA」
呪歌と姫君

呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】

 ←呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【2】 →決断と決意 【1】
そう言うなり、ハイドは目の前においていた酒を一気に煽っている。そのまま、どんと勢いよく置いた盃に残りの酒を注ぐと、彼はフレデリックにグイッと突き出していた。


「話を聞かせて貰おうじゃないか。もったいぶらずに全部、話しちまいな。俺に話をもってくるんだ。表に出せないことだっていうことは百も承知さ」


その声に、フレデリックは差しだされた酒を一気に口にする。もっとも、喉を焼くような安酒に思わずむせかえることしかできない彼の様子をハイドは楽しそうな顔で眺めていた。


「フレデリックさん、一気に飲もうっていうその心意気は買ったよ。だが、その酒はあんたがいつも飲んでる上等のものじゃないんだ。もっとちびちびやらないと」


その声にフレデリックはフンと鼻を鳴らしているだけ。彼が指にいくつもはめている指輪が、薄暗い酒場の中でも光を放っている。それに目をやったハイドは、早く話をしないか、というようにフレデリックの膝を小突いていた。


「あ、ああ。済まない。それはそうとザフィーラ家のことは知っているか?」


いつの間にかハイドとの立場が逆になっているのではないか、という思いを抱きながらもフレデリックは話しだすことしかできない。その彼の言葉をハイドは楽しそうにきいていた。


「ザフィーラ? ああ、聞いたことはある。その家がどうかしたのか?」

「詳しいことは言えぬが、そこの当主と奥方を片付けてほしい。それも、できるだけ早急に」


フレデリックのその言葉に、ハイドはヒューっと口笛を吹く。その彼の様子はいかにも楽しいことを聞いた、というようなもの。その態度を崩すことなく、今度はハイドの方からフレデリックに声がかけられていた。


「じゃあ、フレデリックさん。できるだけ早く、そのザフィーラ家の当主と奥方を片付けちまえばいいわけですね。これだけの報酬をもらったんだ。できるだけ早くさせてもらいますよ」


ニヤリと笑いながらハイドはそう告げる。そこに浮かぶ表情は、失敗することなどない、という自信に満ちたもの。これならば、間違いなく邪魔をするザフィーラ伯を排除することができる。そう思ったフレデリックは酒場の主を呼ぶと、店で一番上等の酒を持ってくるようにと傲慢な調子で告げているのだった。



◇◆◇◆◇



アリオンがザフィーラ家にふらりと姿をみせてから、何日が経っただろう。いつもなら、用事をすませるとサッサと屋敷を離れる彼がそのそぶりを見せることがない。そのことに、アフルはどこか嬉しい気持ちを抑えることができなかった。

彼がやってきた時こそ、自分を仲間外れにしたような雰囲気もあったが、今はそんなことはない。彼女のことを一番に考え、いつもそばにいてくれる。そのことにアフルは気持ちが浮き立ってくるのを止めることができなかった。そして、今日も彼女は竪琴を抱えると、アリオンが滞在している部屋の扉を遠慮がちに叩いていた。


「アリオン。今、いいかしら?」


おそるおそる訊ねられる声だが、それが拒否されることはない。そのことを知っているせいか、彼女の声にはどこか甘えたような響きが含まれている。その澄み切った声に応じるように部屋の扉が開くと、アリオンがにこやかな様子で彼女を迎えていた。


「そのように遠慮なさらなくてもいいのですよ。それはそうと、今日も聞かせてくれるのですか?」


そう言いながら微笑みかけるアリオンの姿に、アフルは頬をかすかに赤くすると竪琴をグイッと突き出している。いつもの彼女とは違う行動に、アリオンの方がちょっと目を丸くしていた。


「どうかなさいましたか?」


アフルの様子に、アリオンは不思議そうな表情を浮かべ、小首を傾げる。その彼の顔から視線を外すようにして、アフルは一気に言葉を紡いでいた。


「いつも、私ばかりだもの。たまには、アリオンが歌っているのを聞きたいわ。それに、このところアリオンがちゃんと歌っているのを聞いた覚えがないんですもの」


そう言うと、アフルは思いっきり頬を膨らませている。その姿は14歳になろうという令嬢とは到底思えない。それでも、それが彼女の魅力だということを知っているアリオンは、使いなれた竪琴を手に取ると、力強い声で歌い始める。それをじっと聞いていたアフルも、やがて、それに合わせるように歌を紡ぐ。そんな二人の歌声に釣られるように、部屋の窓辺には数多くの小鳥が近寄ってきていた。


『やはり、力は強くなっているか……』


声には出されることがない思いが、アリオンの胸には湧き上がっている。しかし、そんなことを考えているとは悟らせない声で、アリオンは穏やかにアフルに問いかけていた。


「伯爵たちは、今夜はお出かけになられるのですか?」

「ええ、そうよ。私はまだ参加できないけど、王宮で夜会が開かれるんですって」


そう呟くアフルの姿は、ちょっと拗ねたようにも感じられる。どうやら、自分だけが置いていかれるということに、彼女は微かな不満を抱いているようだった。そんなアフルを宥めるように、アリオンは口を開いている。


「それでしたら、夜もまた一緒に歌いましょうか? さすがに、僕がやりように街を流して歩く、ということはできませんが」

「あら、できることならアリオンと一緒に街を流してみたいわ。絶対に楽しいと思うもの」


まさかアフルがこの話に食いついてくるとは思わなかったアリオンは、どこか焦ったような表情になっている。それをみたアフルは楽しそうにコロコロと笑い始めていた。


「冗談よ。そんなことしたら、お父様に怒られてしまうわ。それに、私がやっているのは貴族の娘としてのたしなみですもの。アリオンたちのように真剣にやっているわけじゃないから、一緒にできるはずがないってわかっているわ」


そう言うと、アフルはツンと横を向いている。そんな彼女の仕草に、アリオンは思わず笑い出すと改めて竪琴を奏で始めていた。穏やかな時間だけが流れていくようで、彼女はこの一時を心から楽しんでいるのだった。



◇◆◇◆◇



その夜、アフルは部屋の中ですっかり困り果ててしまっていた。

今夜、両親が遅いということを彼女は知っていたために、起きて待っていられるようにと内緒で昼寝を決め込んでいたのだ。しかし、自分がいつまでも起きているとメイドたちの仕事に差し障りがあると思った彼女は、それほど眠くもないのに寝室に引き上げたのだ。だが、昼寝の効果はてきめんに表れている。アフルはベッドに入りながらも、なかなか訪れることのない睡魔に苛立ちを感じていた。


「どうしよう……ちっとも、眠れないわ……お父様やお母様は、帰ってこられたのかしら」


思わず、そんな声が彼女の口からは洩れる。もし、両親が帰ってきているのなら、顔を見たいと思ったアフルは、寝室からそっと抜け出していた。

ふと階下を覗いてみると、ほのかに明るいように感じられる。この様子なら、両親が帰って北に違いないと思った彼女は安心したように階段を降りて行っていた。


「あら、誰の声もしないわ。本当にお父様たちが戻ってこられているのかしら?」


両親が帰ってきているならが、出迎えに出る者が必ずいる。そして、お茶を出したりするメイドの動きもあるはずだ。それなのに、そういった気配が一切感じられない。そのことが嫌な予感となってアフルの胸をしめつける。それでも、彼女は階段を降りる足を止めることができない。やがて、彼女は屋敷の入り口ホールに続く扉をそっと開けているのだった。


「う、うそ……」


扉を開いた先に広がっていた光景は、アフルには信じることのできないものだった。今まで嗅いだことのない匂いが鼻につく。磨き上げられた大理石の床が血の海となり、そこには力なく倒れている人影がある。


「お父様、お母様……」


アフルの口から、小さな悲鳴が上がっている。血溜まりの中に倒れていたのは、彼女が大好きな両親。思わず、そのそばに駆け寄ろうとしたアフルの前に、見たこともない男が姿を現していた。


「あなたは……」


その男は、血に濡れたナイフを持っている。彼が両親をこんな目にあわせたことは間違いがない。そう思った彼女は、震えながら相手をキッと睨んでいる。その姿に、男はニヤリと下卑た笑いを見せていた。


「こんな可愛い子供がいたのか。思ってもいなかったな」


この男こそ、フレデリックから話を持ち掛けられていたハイド。彼は血塗られたナイフをしまうことなく、アフルに近寄ってくる。その視線に、彼女は恐ろしさしか感じることができず、相手から逃げるようにじりじりと下がっていく。


「いやよ……こっちに来ないでよ……」


震えながらそう呟かれる声。そんな中、彼女の中で何かがグイっと首をもたげたようだった。恐怖に震えながらもハイドから目を離すことができないアフル。その彼女の口から、声にならぬ声、音にならぬ音が響いていた。


その響きは壁を伝い、窓を揺らす。


音にならぬ音だというのに、それは屋敷中に響き渡る。


「お、お前……呪歌歌いか……」


苦悶の表情を浮かべながら、ハイドはアフルを見据えている。しかし、その声が彼女の耳に入っている様子はなく、その視線は、血塗れで倒れている両親から放されることがない。

アフルは恐怖に突き動かされて歌い続けるだけ。しかし、そのことを彼女自身がわかっていない。そして、その声は屋敷にいるすべての人々を呼び集めている。


「お、お嬢様……やめてください……くるしい、です……」


可愛がってくれる人々の声。それすらもアフルの耳には届かない。彼女は何かに操られているように、ただ、音を奏で続けるだけ。


「アフル……もう、いい。やめるんだ……」


そんな声を同時に、彼女を抱きしめる力強い腕。今までその声が自分のことをそんな風に呼んでくれただろうか? そんな思いと彼女を抱きしめる腕の力に、アフルはようやく我に返りつつあった。


「アリオン……」


力なく呟かれるその声。その目の焦点は、どうみてもあっているようにはみえない。そんな彼女に、アリオンは何も言わない。彼は彼女がどうしてこうなってしまったのかという理由をはっきりと悟っているからだ。そして、その視界に両親の姿が入らないようにと彼女を包み込み、その髪を優しく撫でている。


「アリオン……わたし……」


一体、自分は何をしていたのだろう。


そんな疑問がアフルの胸の内に浮かんでくるが、その答えを彼女が手に入れることはない。アフルは、自分を抱きしめるアリオンの腕の中に、崩れるように倒れこんでいた。







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