スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【1】 →呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png MAP
もくじ  3kaku_s_L.png CRYSTAL
総もくじ  3kaku_s_L.png FABLE
もくじ  3kaku_s_L.png FATE
総もくじ  3kaku_s_L.png DIVA
総もくじ  3kaku_s_L.png AFFAIR
もくじ  3kaku_s_L.png Kingdom
もくじ  3kaku_s_L.png 泡沫の虹
総もくじ  3kaku_s_L.png Sketch
もくじ  3kaku_s_L.png Odai
  • 【呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【1】】へ
  • 【呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「DIVA」
呪歌と姫君

呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【2】

 ←呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【1】 →呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】
「アリオン、ちょっと今は、わたしに付き合ってもらえないかな?」



◇◆◇◆◇



「なによ、アリオンの馬鹿。なにも、ここに来てすぐ、お父様とお話ししなくてもいいじゃない」


屋敷から庭に出たアフルは、誰もいないことをいいことに、そこらにある石を蹴り飛ばしている。貴族の令嬢として、淑やかにと言われ続けていることを考えれば、その姿はお行儀のいいものではない。

それでも、彼女は自分の不満をぶつけるように庭の石をコンコン蹴飛ばしていた。華奢なヒールを履いた彼女の爪先が当たるたびに、コロコロと石が転がる。それを見ているうちに、アフルは自分が当たり散らしていたことが詰まらないように思えてきた。


「でも、仕方がないわよね。今のアリオンは、わたくしの先生っていうわけでもないんだし。ここに来たのだって、お父様から何かを頼まれていたからなんだろうし……」


彼が屋敷にふらりとやってきた理由が見当もつかないアフルは、そう呟くことしかできない。それでも、何となくなら理由は分からないでもない。なぜなら、彼は世界の各地を自由に歩き回る吟遊詩人。となると、さまざまな情報を持っていることも確実。

なかなか身軽に動くことのできないフェビアンが、世界情勢を知るためにアリオンを使うのは当然のことだ、とアフルは思っていた。

それなのに、どうしてこんなにイライラするのだろう。その理由をアフルは知ろうと、必死になっていた。そんな彼女の脳裏には、屋敷にやってきた時の彼の言葉が思い起こされている。


『アフル様、お久しぶりです。伯爵様は御在宅でしょうか?』


あの時、吟遊詩人のギルドの来客があるということで、アフルは屋敷から出ておくように言われたのだ。さすがにそう言われたから外出する、という気分になれない彼女は庭でのんびりとしていた。そこに、二年ぶりに現れたアリオンの第一声がそれ。その言葉に、彼女は苛立ちを隠すことができないのだ、ということに気がついていた。


「でも、どうしてなのかしら? どうして、お父様に会いに来たことでイライラしているの?」


そう呟いたアフルの可愛らしい頭がコクリと横に傾く。彼が父親に会いに来たことを彼女が不満に思う理由がどこにもないのだ、ということに気がついたからだ。たしかに、二年ぶりにあった相手であるし、兄のように慕ってもいた。だからこそ、彼の口から出る言葉が自分に対する優しいものだということを彼女は期待していたのだ。ところが、その期待があっさりと裏切られ、蚊帳の外に追いやられている。そのことが寂しくて悔しいのだ、ということを彼女の小さな頭はなかなか認めることができないようだった。


「せっかく、アリオンに会えたのにつまらない。あの調子だと、お父様はすぐにアリオンを離すはずがないし……」


ポツリとそう呟くと、アフルはまた庭の小石を蹴飛ばしている。形の整った丸い小石は、彼女の可愛らしい爪先がコツンと当たっただけでコロコロと転がっていく。その乾いた音が彼女の寂しいと思う気持ちに被さるのか、アフルは転がっていく小石の行方をじっとみつめていた。


「お父様も何を考えていらっしゃるのかしら。お客さまがいらっしゃるから、私には外に出ていろ、だなんて……でも、いつもは勝手に外に出るな、っておっしゃっているのに……」


父親の普段の言動からは考えられないことを告げられていたことに、アフルは微かな不満を持っている。それを増長するのが彼女をのけ者にしてアリオンと話をしようとしていること。これが子供らしい不満だということがわかっていても、アフルは気持ちを抑えることができない。そして、心の中で大きくなっていく寂しさや疎外感がどんどん大きくなっていくのを感じた彼女の口は、自分でも気がつかないうちに何かを紡ぎ出そうとしていた。

寂しいと思う心が抑えられなくなってきている。心の中に溢れる色はどこかどす黒いものをはらみだしている。もっとも、彼女自身はそんなことに気がついてはいない。ただ、自分の気持ちを止めることができなくなったように、彼女の口は耳に馴染んだ歌を紡ぎ始めていた。

しかし、その音は今まで彼女が紡いでいた物とはまるで違う。どこか冷たく、それを耳にしたものの全てを凍りつかせるような響き。それが当たりの空気を震わせ、空で鳴いていた小鳥の声もぱったりとやんでいる。

いや、それだけではない。空を飛んでいたはずの小鳥が力なく落ちてくる。その小さな体を小刻みに震わせ、その場から逃げようと羽をばたつかせる。しかし、アフルの歌声に縛られたかのように、その場から動くことができなくなっている。

それは誰がみても異様な光景としかいうことができない。しかし、その場の中心にいるアフルはそんなことに気がついてもいない。ただ、自分の気持ちを抑えることができなくなったように、彼女は歌を紡ぎ続けるだけ。その時、どこからか彼女の名を呼ぶ声が微かに聞こえていた。それを耳にするなり、アフルの歌声がピタリと止まり、小鳥たちは立ちあがると羽づくろいを始めている。


「アフル様。今、何か歌っておられましたか?」


そう言いながら姿を現したのは、フェビアンと話していたはずのアリオン。その彼の顔はどこか青ざめ、ひきつったような笑みが張り付いている。もっとも、そんな彼の様子をアフルは気にする様子もなく、子供らしい笑顔を浮かべ応えるだけ。


「別に歌っていなかったわ。それよりも、お父様とのお話は済んだの? 久しぶりなんだもの。アリオンとゆっくり話がしたいわ」


そう言いながらアリオンを見つめる表情は、明るい少女らしいもの。それを見たアリオンは、彼女の中に眠る力がどんどんと大きくなってきているのだ、ということを改めて感じていた。

このままでは、間違いなく彼やフェビアンが危惧している通りになる。そんな思いだけが彼の中には大きくなっていくが、今の彼女にそのことを言っても効果があるとは思えない。結局、彼はどこかひきつった笑顔のまま、アフルの言葉に頷くことしかできなかった。

その頃、ギルドの長老でもあるフレデリックは、普段であれば近寄ろうとも考えない場末の酒場へと向かっていた。このままでは、いつまでたっても大きな可能性を秘めるアフルをギルドに取り込むことができないと彼が感じたからだった。

ギルドの長老という立場もあり、彼は呪歌歌いを一人でも多く配下におさめたいと願っている。その彼にすれば、アフルの持っている力というものは、何があっても手に入れたくて仕方がないが、彼女が貴族の令嬢である手前、強引なことはできるはずもない。

だが、その辛抱も彼の中ではほとんど限界というところまで来ている。こうなったら、少々の手荒いことをしてでも、力があることがわかっているアフルをギルドに取り込むのだ。そんな思いがフレデリックを突き動かしていた。


「あいつなら、上手くやってくれるだろう。しかし、よくこんな薄汚い場所に平気でいられるものだ」


口の中でぼやきにも似た言葉が紡がれる。華やかな都の中にありながら、そこはまるで影の部分とでもいうかのように薄暗く、殺伐とした雰囲気が漂っている。怪しげな薬を売りつけようとする男。昼間から男を誘うようにする売春婦。そして、なによりも血に飢えたような目をした人間が何人もうろうろしている。

そんな、どう考えても危ない、としか言いようのない路地をフレデリックは自信に満ちた足取りで歩いていた。ギルドの長老であることが一目でわかる長いローブを着ている彼にたかってこようとする相手は何人もいる。それらを軽くあしらいながら、彼は一軒の酒場へと入っていた。

日の高い時間だというのに、店の中は酒と煙草の匂いが満ち溢れている。煙草の煙で店内がうっすらと白くなっている中、フレデリックは奥にあるテーブルへと足を向けている。そこには何本もの酒瓶を前に、ちびりちびりと舐めるように酒を飲んでいる男の姿があるのだった。


「相変わらず、酒びたりのようだな。ハイド」


その声に、ハイドと呼ばれた相手は応えようとはしない。そんな相手の姿を気にすることなく、フレデリックはハイドの前の椅子にどっかと腰をおろしていた。


「頼みがあるんだが、いいか?」


その声と同時にチャリンという音がする。それが目の前に置かれた金貨だということに気がついたハイドは、ようやく目の前にいる相手に興味を示したようだった。


「フレデリックさん、ずいぶんと久しぶりじゃないか。で、今回は俺に何をさせようというんだい? 話だけは聞かせてもらうよ」


そのぶっきら棒ともいえそうな口調に、フレデリックは思わず苦笑を浮かべるしかない。しかし、ここは彼の力がどうしてもいる。そう思っている彼は、ハイドの態度を気にすることなく言葉を続けていた。


「片づけてほしい人物がいるんだよ」


その言葉と同時に、フレデリックはローブの隠しから小さな革袋を取り出すと、ポンとハイドの前に投げている。それがテーブルに当たる音を耳にした彼は、一気に興味深そうな色をその顔に浮かべていた。薄い唇をペロリと舌が舐める。その姿はまるでヘビのようにもみえる、とフレデリックは思っていた。


「フレデリックさん。えらく、今回ははずんでくれるじゃないか」


投げられた革袋を片手で持ったハイドは、どこか楽しそうな口調でそう呟いている。その掌に感じるずっしりとした重みは、革袋の中身がかなりの金額だということを如実に物語る。たしかに、彼は今までも人前ではいえない仕事を何度か頼んできた。その時の態度も金払いがよく、無闇な詮索をしてこないことから、彼が滅多にいない上客だということをハイドは感じている。

とはいっても、今回の袋の重さはそれまでとは考えられない物。この分ではかなりの危ない橋を渡らないといけない。そう感じたハイドは、じっとフレデリックの顔を見つめている。そんな彼の様子に、フレデリックは大きくため息をつくと、ゆっくりとした口調で言葉を紡いでいた。


「今回は、ちょっと厄介だからな。貴族を相手にすることができるか?」


ハイドが報酬に手を出した以上、断るはずがないということをフレデリックは知っている。それでも、確認するかのように告げられる言葉。それを耳にしたハイドは、楽しそうに喉をクックと鳴らすことしかしていなかった。


「フレデリックさん、俺の事をそこまで安くみていたのかい? 王族だろうが貴族だろうが関係ない。あんたは俺に話を持ってきた。俺はこうやってその報酬を受け取った。ここで俺たちの契約は成立だ。相手が貴族? 楽しいじゃないか。何をすればいいんだ?」



総もくじ 3kaku_s_L.png FABLE
総もくじ 3kaku_s_L.png DIVA
総もくじ 3kaku_s_L.png AFFAIR
総もくじ 3kaku_s_L.png Sketch
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png MAP
もくじ  3kaku_s_L.png CRYSTAL
総もくじ  3kaku_s_L.png FABLE
もくじ  3kaku_s_L.png FATE
総もくじ  3kaku_s_L.png DIVA
総もくじ  3kaku_s_L.png AFFAIR
もくじ  3kaku_s_L.png Kingdom
もくじ  3kaku_s_L.png 泡沫の虹
総もくじ  3kaku_s_L.png Sketch
もくじ  3kaku_s_L.png Odai
  • 【呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【1】】へ
  • 【呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【1】】へ
  • 【呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【3】】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。