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「DIVA」
呪歌と姫君

呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【1】

 ←さまざまな思惑 【3】 →呪歌顕現-ジュカケンゲン- 【2】
「これ以上、話すことはない。さっさと帰ってもらえないか」


苛立ちを含んだ声が、部屋の中に響いていた。そこは、穏やかな日の光が差し込んでいるザフィーラ伯爵邸の一室。しかし、そこに漂う雰囲気は険悪なものとしか言いようがなかった。


「お言葉を返すようですが、ご令嬢をこのままにしておくことは、この上もなく危険なこと。そのことが、伯爵にはお分かりではないのですか?」


吟遊詩人ギルドの長老である、フレデリックの声。その声に、ザフィーラ伯フェビアンの顔が微かに歪む。そのことをフレデリックが見逃すはずもなく、ここぞとばかりに言葉を畳みかけてくる。


「そのような顔をなさるということは、伯爵もお分かりなのでしょう。それなのに、どうして、我々の言葉を無視なさるようなことをなさいますか」


それに対して、フェビアンは応えようとはしない。キッと唇を噛みしめた彼は、ひたすら言いつのる相手を無視するかのように、視線を外していた。

二人のそんなやり取りをじっと黙ってみているのは、ギルドの長であるクロード。彼はどうすることが一番いいのだろうか、と考え込んでいるようだった。


「伯爵、黙っておられては困ります。我々とて、いつまでもあなたの言いなりになるわけにもいかないのですから」


相手の投げかける言葉に、フェビアンの肩がピクリと動く。そのままクルリと振り返った彼は、ツカツカと相手に近づくと、グッとその胸倉を掴んでいた。


「その言葉は、我が家に対する侮辱と思わせていただきます。いつ、私がギルドに無理難題を申しました。そちらの方こそ、無茶をおっしゃっているのだということをご理解いただきたい」


フェビアンの気迫に、フレデリックが一瞬、たじろぐ。それを見ていたクロードが、二人の間に割って入っていた。


「フレデリック、そのあたりにしておけ。ザフィーラ伯、この者の言ったことがお気に障ったことはわかります。そのことに関しては、深くお詫びをいたしますが、我々の言いたいこともわかっていただけませんでしょうか」


クロードのその声に、フェビアンは大きくため息をつく。その顔には、疲れたような色しか浮かんでいない。それは彼にとって、二人の来訪が精神的に疲労感を与える物でしかないということを物語っていた。


「クロード殿、わたしも馬鹿ではないです。フレデリック殿の言いたいことは分かっています。しかし、それとアフルをギルドに渡すのとは意味が違う」


そう言い放つと、フェビアンはそれ以上のことは言いたくない、というように横を向く。それを見ていたフレデリックが口を開こうとするのを、クロードは押さえつけていた。


「どうしてですか。ご令嬢の力は間違いないこと。あの力が今のまま、何の訓練も受けずにいたらどうなるかお分かりですか。下手をすると、人を傷つけることになる。そのことも理解なさった上で、我々の申し出を断る、とおっしゃられるのですか?」


クロードの穏やかなその声に、フェビアンも興味を持ったような表情を見せる。だが、彼が抑えているフレデリックの顔を見たとたん、フェビアンの表情はまた固いものになっていた。


「お断りします。アフルは、我が家の跡取り。そのことは、陛下も認めてくださっていること」

「しかし、陛下はご令嬢が呪歌歌いだとご存知ないのでしょう。呪歌歌いはギルドに。これは、昔から決まっていること」


勝ち誇ったようなフレデリックの声が響く。それに対して、フェビアンが何かを言う前に、クロードが大声を出していた。


「黙れ!」


鍛え上げられたその声は、部屋の壁を揺らし、窓にビンビンと響く。外でこのような姿を見せたことのないクロードの気迫に、フェビアンもフレデリックもすっかり呑み込まれていた。


「失礼いたしました。少々、この者の言葉が過ぎましたので」


唖然としている二人に、クロードがいつもと変わらぬ調子で声をかける。その言葉にフレデリックは反論したげな顔をするが、クロードにギロリと睨まれ沈黙する。そのクロードに、フェビアンは問い掛けることしかできなかった。


「クロード殿、ギルドの言い分はわかっています。だが、アフルが呪歌歌いだという証拠はどこにもない。そのこともお分かりでしょうか?」

「な、何を世迷い言を。そちらの奥方の血筋は……」


フェビアンの問いかけに、興奮したフレデリックが叫ぶ。その口を強引に押さえつけたクロードは何事もなかったようにフェビアンに向き合っていた。


「そうですね。たしかに、ご令嬢が呪歌歌いだという証拠はどこにもない。しかし、彼女の声を一度、聞かせていただきました。間違いなく、彼女の中には力がある。それは、ギルドの長として、断言することができます」

「そちらの言い分はよくわかりました。だが、こちらの返事が変わることもない。何度来られても、アフルはギルドに渡さぬ。このことが分かられたら、早々にお戻りください。わたしも忙しいのですから」


その手でフェビアンは、机の上にある呼び鈴をけたたましく振り鳴らす。その音に呼ばれるようにして顔を出した執事に、彼は「お客様がお帰りだ」とだけ告げ、そのまま席を立っていた。

屋敷の主人であるザフィーラ伯のその言葉に、クロードもフレデリックも従うしかない。二人を見る執事の視線が、どこか冷たいものだということを感じながらも、彼らは案内されるままに屋敷の外に出るしかないのだった。


「クロード様。どうして、こんなに簡単に引き下がられるのですか」


屋敷から半ば、追い出されるような仕打ちをうけたことに、フレデリックは怒りを覚えている。そのまま、長であるクロードに突っかかる彼だが、それをクロードは軽く受け流すだけ。そのことで、フレデリックの怒りは火に注がれた油のようになっている。

だが、そのことを彼は口に出そうとはせず、何事かを考えるような表情を浮かべていた。そのことに違和感を覚えたクロードだが、隣でうるさく叫ばれることに嫌気がさしていたため、何も言うことはない。彼自身も考えることが山ほどあるからだ。

クロードとフレデリック。同じギルドに属する二人であるが、その考え方がまるで違っていることは有名な事実。頑固なまでに旧来の形を守ろうとするフレデリックに対して、クロードの考えは柔軟なもの。水と油ほどに考えの違う二人は、互いの思いの中に没頭しながら、ギルドへの帰路をたどっていた。



◇◆◇◆◇



クロードとフレデリックという、招かれざる客を強引に屋敷から追い出したフェビアンは、大きくため息をつくことしかできなかった。

彼らがこのようにやってくるようになってから、どれほどの時間がたったのだろう。そんなことを考える彼の表情は、どこか険しいものになっていた。


「まったく……いつになったら、諦めるというのだ。おまけに、シュゼットの家系のことにも気がついていたな。まあ、こればかりは仕方がないことか……」


フレデリックがこの件で屋敷を訪問してから、二年の月日が流れようとしている。その間に、いろいろと調べ上げたのだということは簡単にわかる。だからこそ、この頃は以前にもまして言葉がきつくなるのか。

そう思ったフェビアンはこれからのことを考えるかのように目を細めていた。その彼の耳に、遠慮がちに扉を叩く音が聞こえてくる。その音に少女の声が被さっていることに気がついたとたん、彼は相好を崩すと「お入り」と優しい声で応えていた。

その声に促されるように扉が開くと、ゆっくりとした足取りで少女が部屋に入ってきた。柔らかい巻き毛の金髪と、澄み切った青い瞳が印象的な少女。しかし、その顔色はどことなく青ざめ、強張ったような表情を浮かべていた。その少女に、フェビアンは優しく声をかける。


「どうしたんだい、アフル。何か、気になることでもあるのか?」

「いいえ、特には。あの、お父様……お客様は、お帰りになられましたの?」


微かなその声は、どこか不安な思いを伝えている。それを耳にしたフェビアンは、アフルの細い体をしっかりと抱きしめていた。


「ああ、先ほど帰られた。そのことが気になったのか?」


フェビアンのその声に、アフルは返事をしようとはしない。それでも、先ほどまで感じていた不安感はなくなっている。父親の力強い腕の中で、アフルはようやく安心したような表情を浮かべていた。

そんな娘の背中をフェビアンはポンポンと叩く。そのことがアフルには嬉しいのだろう。その頬がうっすらと赤くなり、彼女はそれまでとは違った明るい声を出していた。


「お父様、アリオンが帰ってきましたの。お会いになるでしょう?」

「そうだな。ちょっと話したいこともあるし。それはそうと、お前はいいのか?」


父親のその声に、アフルはプイっと横を向いてしまっている。その顔が拗ねたように膨れているのに気がついたフェビアンは、微笑ましいものを感じていた。


「お父様とアリオンのお話の邪魔はしたくないですもの。だって、いつだって、わたくしのこと邪魔になさっているじゃありませんか」


二年前まで、アリオンはアフルの家庭教師として屋敷にいた。竪琴をはじめとして様々なことを教えてくれる彼に、彼女が兄に寄せるような思いを抱いていたのは事実。しかし、彼が屋敷を離れる直前からの態度に、少なからず腹を立てていたのだ。

いつの間にか、アリオンは彼女よりも屋敷の主であるザフィーラ伯と一緒にいる方が多くなっていた。その理由が、アフルの中に眠る可能性のせいであることを彼女は知らない。そのため、仲間外れにされたような思いが彼女の中に育ったのも、間違いではなかったのだ。

だが、そのことに対する不満を口にするのがいいことではない、ということを彼女は敏感に感じている。それでも、知らん顔をすることのできない彼女ができる最大の反抗が、思いっきり顔を膨らせること。そのことを知っているフェビアンは、アフルを宥めるような口調で声をかけていた。


「そんな顔をするものじゃないよ。とにかく、アリオンを連れてきてくれるね」

「わかっていますわ。それに、もう、そこまで来ていますもの」


父親の返事が分かっていたアフルは、拗ねたような調子でそう呟くと、部屋の扉を開けていた。そこには、すっかり恐縮したようなアリオンの姿がある。

それを見たフェビアンは部屋に入るように促すが、なかなか彼が動こうとはしない。そんな彼の隣を、ツンと頭をあげたアフルが通り過ぎる。その様子に、何か言いたげな顔をしたアリオンは、彼女の後を追いかけようとする。そんな彼の足をぴたりと止めたのは、穏やかな中に力を感じさせるフェビアンの声だった。



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