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「DIVA」
呪歌と姫君

さまざまな思惑 【3】

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その問いかけに、フレデリックは応えようとはしない。それを見たクロードは肩をすくめると、何事もないような調子で言葉を続けていた。


「とにかく、先に俺が見ていたから。用が済めば、元に戻しておく。お前が調べたいことがあるなら、その後でもいいだろう。それとも、それでは問題があるのか?」


ギルドの長であるクロードのその言葉に、長老であっても逆らえるはずがない。彼は口の中で「大丈夫です」と小さく呟くことしかできなかった。

そんなフレデリックの姿を、冷やかな視線で見ていたクロードはサッサと自室に戻っている。そこで、持っていた資料を改めて読み直す彼の表情は、どこか強張ったものになっていた。


「思ったとおりか……しかし、こうなると、ちょっと厄介かもしれないな……アリオンは、このことを知っているんだろうか」


誰もいないにも関わらず、聞かれることを恐れるように呟かれる声。そこには、ある家の家系図が記されている。

そして、これはクロードにとっても信じがたいものであるのだろう。何度も何度もそこを食い入るように見つめている。


「明日だな。明日、アリオンが来てから、この話は進めるしかないな」


そう呟くと、クロードは持っていたそれをパタンと閉じている。そこに浮かんでいる表情は、いつものクロードからは考えられないものだが、誰もそれを見ていない。

その姿を目にした者があれば、ギルド長は何かを真剣に悩んでいたというだろう。だが、それに気がつくものはいない。風だけがそよそよと揺らぎ、そんなクロードの姿を見ているだけ。


そして、その翌日――。


ギルドの長であるクロードの呼び出しに、どこか緊張した様子のアリオンがやってきたのは、約束した通りの時間だった。


「クロード様に呼ばれたのですが、お会いすることはできるでしょうか」


今は夜が明けてすぐともいえる時間。こんな時間に、勝手にクロードの部屋に入ることはできない。そう考えたアリオンは、ギルドの入口で門番のようにでんと構えている相手にそう告げる。

もっとも、そう言われた受付は、アリオンの言葉に目を白黒させていた。


「クロード様が? ちょ、ちょっと待っててくれ。そんな話は聞いてなかったがな。それに、いくらなんでも、こんな時間にくるアホがいるか」


その言葉に、アリオンは頭をかいている。たしかに、言われてみればそうなのだが、一刻も早くクロードに会う必要がある、という強迫観念をアリオンは抱いていた。

その理由がなんなのかわからない。ただ、長老の態度が変に気になり、できればクロードと一対一で会いたいと思ったのだ。その時、アリオンの耳には聞きなれた声が飛び込んでいる。


「アリオン、ずいぶんと早く来てくれたね。ひょっとして、夕べは寝ていない? だとしたら、無理をさせたね」


その声に振り向いたアリオンと受付は口をあんぐりとあけている。彼らの目の前に立っていたのは、ギルド長であるクロードその人だったのだ。


「クロード様……け、今朝はずいぶんとお早いんですね……」

「いや、早く目が覚めたしね。それに、アリオンが朝一番で来てくれるって言っていたからな。もっとも、こんなに早くに来てくれるとは思っていなかったから、受付には連絡していなかったんだよ。というより、連絡しに来たら、アリオンが来ていたんだよな」


ギルド長とも思えない、気さくな声が入口の天井に響く。それを耳にしたアリオンたちが脱力してしまうのも仕方がないことだろう。そんな二人を見たクロードは、真剣な様子になるとアリオンに近寄ると、耳元でそっと囁く。


「ここで、話をするのもなんだ。これ以上、人目にもつきたくない。ちょっと、一緒に来い」


その声に頷いたアリオンは、受付の相手に「ちょっと、行ってくる」と声をかけると、クロードの後をついていく。そのまま、ギルド長の部屋に招き入れられたアリオンは、クロードの示すままに、机の正面にある椅子に腰かけていた。


「クロード様、何かあったのですか。今まで、こうやって、呼ばれるようなことはなかったと思うのですが」


アリオンの質問の声を遮るように、クロードは資料庫にあったものをアリオンの目の前に突きつける。そして、低いがはっきりとした声で、彼に問い掛けていた。


「ザフィーラ家のことを知っているか? いや、お前は気が付いているはずだな」

「な、何をおっしゃっているんですか?」


クロードの言葉の意味がアリオンには、はっきりとわかっている。しかし、そのことを認めるわけにはいかない。そんなことをすれば、どうなるかがアリオンにはわかっていたからだ。


「クロード様、何をおっしゃりたいんですか」


クロードの問いかけに、なんとかして白を切ろうとするアリオン。そんな彼に、クロードは持っていた物の1ページをアリオンに示していた。


「ここをみろ。今までに呪歌歌いは大勢いた。その中でただ一人、確実に呪歌歌いの家系から外れた者がいる」

「どうして、そんなことを僕に言われるんですか」


クロードの言葉の意味が、アリオンにはなんとなくわかる。それでも、そのことを認めるわけにはいかない。そう言いたげな表情が、アリオンの顔には浮かぶ。その彼に、クロードは畳みかけるように言葉を続けていた。


「ここにあるメリッサという名前。彼女はそこに書いてあるようにある貴族に見初められ、妻として迎えられた。しかし、その当時も呪歌歌いがそれ以外の者と結ばれることが滅多になかったことは、お前も知っているな」


その声に、アリオンは頷くことしかできない。その当時は、今よりも呪歌歌いが多かったが、自由に結婚することはまず不可能。なぜなら、呪歌は血で引き継がれるという風説があったから。

それなのに、どうしてメリッサは貴族に見初められ、その妻となることができたのか。そんな色がアリオンの顔には宿っている。そんな彼に、クロードはゆっくりと語りかけていた。


「どうやら、メリッサは呪歌歌いの家に生まれながら、その才が芽を出さなかったらしい。そういう子供は今でもいる。いや、そういう子供の方が多いな」

「そうですね。そのせいで、どんどんと呪歌歌いは減っていく」

「ああ。だが、当時はまだそういう意味では、締め付けが緩かった。そして、メリッサに恋した貴族の思いに打たれたギルドの上層部が結婚を認めた。そのために、その家、アンテノール家には呪歌歌いの血が微かながらでも混じっている」


クロードの話に、アリオンは信じられないというような顔をしている。だが、その表情にはどこか納得したような光もあった。

なぜなら、ザフィーラ家の夫人である、シュゼットがどの家の出身かということをアリオンは思い出したのだ。たしか、シュゼットはアンテノール家の娘。

ということは、間違いなく、アフルはシュゼットから呪歌歌いの血を引いている。そのことがわかったアリオンは、顔色が青ざめるのを抑えることができなかった。

そんな彼の様子から、大体の事情を察したクロードは大きくため息をつく。その姿は彼自身の思いがぐらついていることの証明なのだろう。


「アリオン。お前が認めたくないのはわかる。だが、ザフィーラ家の令嬢は呪歌が歌えるな」

「クロード様、どうして、それを……」


クロードの言葉に、アリオンはそう呟くことしかできない。そんな彼をみたクロードは、ポツリと声をかけていた。


「この前、ザフィーラ家の前で少女の声を聞いた。それが力を持っているのは俺にはすぐにわかった。お前が報告しない理由はわからないでもないが、隠しきれると思ったのか」

「クロード様……」


アリオンを問い詰めるクロードの言葉に、アリオン自身は何も言うことができない。そんな彼の肩を叩きながら、クロードは穏やかに言葉を続けていた。


「今のところ、俺はこのことを表沙汰にするつもりはない。その意味がわかるな」


クロードの言葉に、アリオンは言葉を詰まらせている。キッと唇を噛み、何も言おうとしないアリオンに、クロードはそれ以上の言葉をかけるつもりもないようだった。



◇◆◇◆◇



アリオンがギルドに姿を見せたのと、ほとんど同じ時刻。夜が明けたばかりのその時刻にザフィーラ家の門を叩く影があった。

それは、遅くまで夜会に出席していた主人がようやく寝付く時刻。そんな時刻にやってくる不謹慎な者を屋敷に入れる必要はない。そう判断した執事は、玄関払いをするために眠い目をこすりながら姿をみせていた。


「このような時間においでになるとは、常識があられないのですか。何のご用ですか」


門を叩いているのがギルドの長老フレデリックだということに気付いた執事は、そう告げるだけ。そんな彼に、長老は屋敷の主人であるザフィーラ伯との会見を強硬に申し入れていた。


「何をおっしゃいますか。伯爵様はお休みになっておられます。お引き取りください」


そう言いきる執事の耳元に、フレデリックはある言葉を囁きかける。それを聞いた瞬間、彼は体を震わせると、しぶしぶといった表情で、門を開くと長老を招き入れていた。

そのまま、彼を屋敷の中に通した執事は、伯爵の怒りを覚悟で寝室へと足を運んでいた。


「まったく、こんな時間にどうしたのだ」


朝早い時間の執事の乱入に、ザフィーラ伯フェビアンは不機嫌そうな顔をしている。その彼の耳に、執事は先ほど囁かれた言葉を口にしていた。とたんに、フェビアンの顔色が変わり、その視線がきついものになる。


「わかった。すぐに会う。それと、誰もそこには近寄らせるな」


そう命じたフェビアンは軽い部屋着をまとうと、ギルドの長老が待つ部屋へと歩いていく。その表情がその部屋に近づくたびに険しくなっていることに彼自身、気が付いていなかった。


「ザフィーラ伯爵、おはようございます。このようなお時間にお邪魔したご無礼は、平にご容赦ください。どうしても、お耳に入れたいことがございましたので」


フレデリックの声にフェビアンは返事をしようとはしない。その彼に長老はニヤリと笑うと単刀直入に言葉を紡ぐ。


「お嬢様をギルドにお迎えしたい。その理由はあなたが一番、よくご存知のはず」

「何を急に。どうして、アフルをギルドに渡さなければならない」


そんなフェビアンの反応も、フレデリックは予測していたのだろう。態度を変えることなく、彼は言葉を続けている。


「呪歌歌いはギルドが管轄しなければいけないからです」

「断る。そして、アフルは呪歌歌いではない」


フレデリックの顔を睨みつけるフェビアンの形相は、怒り狂ったものでしかない。しかし、そんな彼を前にしても、フレデリックは「令嬢をギルドに」と告げることしかしなかった。






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