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「DIVA」
呪歌と姫君

さまざまな思惑 【1】

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ランスからアフルの持つ力のことを知らされた翌日、アリオンは思い切ってザフィーラ伯フェビアンと話をしてみようと思っていた。

アフルの力のことがいつまでも隠しきれないのは、吟遊詩人のギルドに所属するアリオンには簡単にわかる。その時、ザフィーラ伯爵であるフェビアンがどこまで知っているかで防波堤になりうる。そのこともアリオンには自明の理ともいえることだった。


「伯爵、ちょっと、よろしいでしょうか」


ゆったりとした部屋着に着替え、のんびりと時間を過ごしている様子のフェビアン。今なら、落ち着いて話をすることができる、とアリオンは思っていた。

彼の周囲を見ても、他に誰もいる様子はない。そのことは、フェビアンと二人で話をしたいとおもっているアリオンにとって、何よりのことだった。


「アリオンか、どうした。なにか、気になることでもあるのか?」


アリオンの声に頭をあげたフェビアンが穏やかな声で問い掛ける。それに対して、アリオンは真剣な表情でフェビアンの顔をみつめていた。

その様子に何かを感じたのか、フェビアンは静かに立ち上がるとアリオンを部屋に招き入れる。そして、そのまま扉に鍵をかけると、アリオンに座るようにと椅子をしめしていた。


「君がそんな顔をしているのはみたことがない。何か、よほど気になることがあるんだろう。話してごらん」


その声に、アリオンは大きく息を吸い込むと、フェビアンの顔を正面からみつめている。そして、一気に思っていることを口にしていた。


「失礼なことは重々、承知しております。しかし、あえてお訊ねいたします。この家に呪歌歌いの血は混じっているのでしょうか」


それを聞いたとたん、フェビアンの眉がピクンとはねる。そのかすかな変化を、アリオンは見逃していなかった。そのまま、畳みかけるように彼は問いかけの言葉を続けている。


「ひょっとすると、奥方様の家系にその血が混じっていたのではないでしょうか。呪歌歌いの血は母親から受け継がれるときいたことがあります。そして、他の国では存じませんが、ファクリスにおいて貴族に呪歌歌いが出たときいたことはありません」


そこまで一気にアリオンが口にした時、フェビアンがその声を遮るかのように声を発していた。


「それを知っていながら、我が家に呪歌歌いの血が混じっているという疑いを持つのか」


その声はアリオンを恫喝するような気迫が混じっている。今、これに気圧されたら、知りたいことを知ることはできない。

そう感じたアリオンは、姿勢をただし、ぐっと力を込めるとフェビアンの目から視線を外そうとしない。そんな彼に、フェビアンは馬鹿なことをいうな、というような調子の声をかける。


「いくら、君がアフルの教師であっても、これ以上の暴言は許さない。君は何をもって、我が家に呪歌歌いの血が流れていると思うのだ」


その言葉こそ、アリオンが待っていたものといえる。彼はフェビアンの言葉をつかまえると、それに対する反撃を試みていた。


「アフル様の歌声です。あれには、間違いなく力があります。それも、普通では考えられないほどのもの。伯爵は、吟遊詩人である僕の言葉を疑われますか」


問い詰めるアリオンの声に、フェビアンは応えようとはしない。その彼から何とかして答えを得ようと、アリオンは必死になっていた。その声が荒げられ、語気がますます強くなる。


「伯爵、答えてはいただけないのですか。これは、重要なことです。このまま黙っておられれば、僕はこのことをギルドに報告しないといけません」


アリオンがそう叫んだ途端、机を激しく叩く音が響く。その音にビクンとなったアリオンだが、一歩も引くつもりはない。彼は、激しい勢いで机を叩きつけたフェビアンの目を正面からみつめている。


「伯爵、答えていただけますね。僕はアフル様のことをギルドに報告したくない。でも、このまま何もおっしゃれないのなら、報告をしないといけなくなってしまいます」

「……やめてくれ」


低く、掠れたようなフェビアンの声がアリオンの耳に届いていた。その声は、いつもの自信に満ちた彼の物とは思えない、力のないもの。

そして、椅子に崩れ落ちるように腰掛けたフェビアンはじっとアリオンの顔を見つめていた。


「まだ、ギルドには何も言っていないんだな」


フェビアンの問いかけに、アリオンは大きく頷くのみ。それを見たフェビアンは大きく息を吐くと、安心したような表情になっていた。


「伯爵、やはり、この家には呪歌歌いの血が流れているのですか?」


このことは事実に違いない。そう確信したアリオンだが、それはまだ推察でしかない。この家の当主であるフェビアンの口から発せられた言葉こそが力を持つ。

そのことを知っているからこそ、アリオンは何度も同じことを問い掛ける。そのアリオンの姿に、フェビアンも観念したような表情で口を開いていた。


「君の言うとおりだ。我が家には微かにだが、呪歌歌いの血が流れている」


フェビアンの言葉に、アリオンは生唾を呑み込んでいる。事実としてこの言葉が告げられることに、覚悟を決めていたはず。

それでも、実際に耳にするとその大きさというものに押しつぶされそうになる。しかし、アリオンはそのような色を懸命に隠しながら、フェビアンの言葉の続きを待っていた。その彼の様子に、フェビアンは安心したような色を浮かべていた。


「君が取り乱さないでくれて助かる」

「いえ、このことは、僕が無理に伯爵から聞き出したことですから」


そう言いつつ、アリオンの舌は無意識のうちに唇を舐めている。そこが思った以上に乾いていることに気がついた彼は、自分がどれほど緊張しているのかということに気づかされていた。

そんなアリオンの思いに気づかぬように、フェビアンは言葉を続けていく。


「君の言ったとおりだ。シュゼットの5代前。もう、血縁ともいえぬ者が呪歌歌いの出だった」

「5代前の血がアフル様に出たのですか。しかし、奥方様も貴族のご令嬢でしたよね。よく、呪歌歌いの血が混じりましたね」


そう言ったアリオンは、ハッと気がついたような表情を浮かべていた。その顔に、フェビアンは不思議そうな色をむける。


「どうかしたのか? シュゼットに呪歌歌いの血が流れているのはおかしいのか?」


アリオンの様子に首を傾げたフェビアンが、そう問いかける。それに対して、アリオンは言葉を選ぶようにしてこたえていた。


「いえ、5代ほど前だというのなら、奥方様に呪歌歌いの血が混じっていてもおかしくはありません」


アリオンの声にフェビアンは「そうか?」とだけ応え、話の続きを待つ。それを見たアリオンは、どう話をすればいいのだろう、というような色を浮かべていた。


「ギルドの記録にも、あの頃はまだ呪歌歌いが多かったことが記されています。ですので、力の気配がなければ、呪歌歌いの家系の者でも外に出ることができたと聞いています」

「ということは、今は違うのだね」

「そのことは、伯爵もよくご存知でしょう。違いますか?」


アリオンの問いかけにフェビアンは応えようとはせず、彼の話の続きだけを待っている。その姿にアリオンは、話を続けるしかないということを悟っていた。


「僕の推察で間違ってはいないと思います。もし、証拠を求められるのならば、ギルドで調べるという手段も残されています。ギルドには呪歌歌いの記録が全て残っていますから」

「そこまでする必要はない。というより、君がそのようにすれば、ギルドに知らせるのと同じことだろう」


フェビアンの言葉は、何か含みを持ったように感じられる。そのことをアリオンが問いただそうとする前に、フェビアンが口を開いていた。


「ところで、アフルの可能性を知っている者は他にはいるのかい?」


静かに問われるその声に、刃のような鋭さを感じたアリオンは、背筋が冷たくなるのを感じていた。この人は、何を考えているのか。そんな思いが彼の中には湧き上がってくる。


「もう一人だけ。しかし、その者はギルドには報告しません」

「どうして、そこまで言い切れる」

「その相手も呪歌歌いだからです。彼はただ、その血を引いているというだけで、ギルドに縛られている。つまり、ギルドの思惑に振り回されている相手です。そして、彼からもギルドに報告しない、という言質(げんち)を取ってあります」


そう言い切ったアリオンに、フェビアンは驚いたような表情を向けている。それを見たアリオンは、彼の表情の意味がわからずに、問い返していた。


「どうして、そのような顔をなさるのですか」

「いや。君がそこまでやってくれるとは思っていなかったからね。たしかに、君をアフルの家庭教師に、と頼んだ時はそのことも期待していた」


フェビアンの言葉に、今度はアリオンが驚いている。キョトンとしたその表情に苦笑を浮かべたフェビアンはゆっくりと言葉を続けていた。


「私もシュゼットも最初からアフルが呪歌を歌うかもしれないという可能性に気が付いていた。それを伏せて、君を雇った。その理由は、君が今のようにしてくれることを期待していたからだ」

「伯爵……」

「だが、君のしてくれたことは、私たちのそれをはるかに超えている。君がやっていることは、ギルドに対する反乱だと受け止められても仕方がないことだよ」


そう告げると、フェビアンはアリオンの顔を正面から見つめている。それに対して、アリオンは微かに微笑を浮かべると、しっかりとした口調で応えていた。


「僕は何があってもアフル様を守りたいですから。そして、ギルドに彼女の力のことが分かれば、どうなるかは火を見るよりも明らかです」

「ギルドは無理にでも、アフルを手中におさめようとするだろうね」


ポツリと呟かれるその言葉に、アリオンはコクリと頷いている。そして、そのことは彼が何としてでも阻止したいこと。そう言いたげな光が彼の瞳には浮かんでいる。


「アリオン、君は本当にギルドにこのことを告げないのかい? 吟遊詩人である君が、呪歌の脅威を知らないはずがない。それでも、君はアフルのことをギルドに告げないというのかい?」


まるでアリオンを試すかのように、同じ言葉が何度もフェビアンの口から洩れる。しかし、アリオンの返事はすでに決まっている。彼ははっきりとした声で、フェビアンの言葉に応えていた。




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