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「DIVA」
呪歌と姫君

詩人の恋 【3】

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どこか思わせぶりなアリオンの言葉に、ランスはちょっと不機嫌な表情になっている。そんなランスの姿に気が付いているはずなのに、それ以上のことは何も口にしないアリオン。

やがて、2人は屋敷の奥まった位置にある庭に足を踏み入れていた。そこは、アフルが好んで竪琴の練習をする場所。今も、一人で練習している彼女の姿をみつけたアリオンは、ランスに声をかけていた。


「ランス、今から聞こえる歌をよく聞いてほしいんだ」

「そりゃ、聞くぐらいならいくらでもするがな。あの子は誰だ? ずいぶんと可愛らしい子じゃないか」


竪琴を抱えて椅子に腰かけているアフルの姿に、ランスはヒューっと口笛を吹きながら呟いている。彼女の金髪が日の光を受けて輝くのは、たしかに見事と言えるものだろう。

そうやって、アフルに興味を示したランスをアリオンは思わず睨みかえしていた。


「アフル様は可愛らしいからな。だからといって、口説くんじゃないぞ。彼女はこの家の跡取りでもあるお嬢様だからな」


何の気なしに口にした言葉に、ムッとした顔で応えるアリオンを見たランスは肩をすくめることしかできない。それでも、アフルが歌い出す声を聞いた途端、彼の顔色は一気に青ざめていた。


「おい、アリオン。今の歌声は、あのお嬢さんなのか?」


その声が人に聞かれるのを恐れるかのように小さいものであることに、アリオンは気が付いている。ランスの反応が、アリオン自身も危惧していた怖れにつながっていることは明白。

アリオンの明るい表情が急に曇ったかと思うと、彼はランスに向かって声をかけていた。


「つまり、彼女は間違いないっていうことか?」


あえて、何が、とは言わない。それでも、ランスにはアリオンの言いたいことがわかっている。彼は小さく頷くと、じっとアフルの姿だけをみつめている。その手が、無意識に固く握りしめられていることに、ランス自身も気が付いていない。


「まさか、ここで見つけることになるとはな……」


そう呟くランスの声は、どことなく力がない。その彼にアリオンは、場所を変えて話をしようと提案していた。

それに、ランスが応じないわけがない。その足で2人はアリオンが屋敷で使っている部屋へと向かっていた。その間、2人とも何も言わない。どこか深刻な雰囲気が彼らを覆っている。


「さ、アリオン。詳しい話を聞かせてくれるな」


ようやく部屋に入り、誰にも話を聞かれる心配がないとわかった途端、ランスはそうアリオンに詰め寄っていた。その言葉に、アリオンは苦笑を浮かべるだけ。

だが、このことは彼自身も話さなくてはいけないとわかっている。彼は、ゆっくりと言葉を選ぶように口を開いていた。


「詳しい話っていっても、僕からはできることはほとんどない」

「そうか? 俺に聞いてくれといってきたんだ。何か、勘付いていたんだろう。そうだろう?」


部屋の中にある椅子にドカッと腰を下ろしたランスは、そう言ってアリオンを見つめている。その言葉に、アリオンも逃げることはできないとわかったのか、しぶしぶと言葉を紡いでいく。


「偶然だった。ちょうど、お前に久し振りにあった次の日かな。アフル様が歌を聞いてくれと言ったんだ」

「俺とあった日というと、3日ほど前に街で会ったあの日か。本当に久しぶりだったからな」

「ああ、二年ぶりだった。で、話を戻すと、アフル様が歌を聞いてくれと言うんだ。その時も、ああやって歌ってくれた」


そう言うと、アリオンはその先を話すのをためらうように言葉を切っている。そんな彼の姿を見たランスは、ポツリと口を開いていた。


「あのお嬢さんの声に、小鳥でも近寄ってきたか。多分、そのあたりだろうな。あの声なら、間違いなく小鳥は反応する」

「わかるのか? そんなことまで」


ランスの言葉に、アリオンは驚いたような声を上げる。その彼に対して、ランスは肩をすくめながら言葉を続けていた。


「あのな。一応、俺の家系は呪歌歌いなんだ。たしかに、それほど力があるっていうわけじゃないがな。それでも、力のある人間の持っている器は判別できる」


そのまま、言葉を切ったランスはアリオンの顔をじっとみつめている。彼が次に何を口にするのかと、不安になったアリオンはその顔をじっと見ることしかできない。

部屋の中の空気は一気に緊張感が高まっていた。その張り詰めた雰囲気にのまれたようになっていたアリオンだが、声を振り絞るようにしてランスに問い掛けていた。


「お前は、何が言いたいんだ」

「あのお嬢さんの力は相当だってことだ」


その声にアリオンは顔を歪めている。そんなことを聞きたいのではないというような表情がその顔には浮かび、ランスの言葉を否定するように顔を横に向ける。そんなアリオンに、ランスは畳みかけるような調子で声をかけていた。


「ちゃんと現実をみろ。あのお嬢さんの力はまだまだ伸びる。あの子は、ギルドが喉から手が出るほど欲しがっている本物の呪歌歌いだ」


ランスのその声にアリオンは弾かれたように振り向いている。その目がランスをキッと睨み、口元がギリギリと歯ぎしりをするように噛みしめられる。そのままの勢いで、アリオンはランスに詰め寄っていた。


「どうして、少し聞いただけでそんなことがいえる。彼女が呪歌歌いのはずがないだろう。アフル様はファクリスでも有名な貴族の令嬢だぞ」


アリオンの勢いは、今にも掴みかからんように感じられる。その彼を落ち着かせる意味もあるのだろう。ランスの声はことさらに冷静さを感じさせるものだった。


「落ちつけよ。俺は感じたことを言っただけだ。たしかに、貴族で呪歌歌いが出たことはない。それは俺も知っている。だが、あのお嬢さんの声は間違いない。それも、相当の力が秘められている。ギルドがこれを知ったら、絶対に手に入れようとするぞ」

「そんなことはさせない」


アリオンのその声に、ランスは驚いたような表情を浮かべている。アリオンの言葉が信じられないといった顔で、ランスは言葉を続けていた。


「お前、言っていることがわかっているのか? 呪歌だぞ。仮にも吟遊詩人のはしくれだろう。呪歌がどんなものか、お前だってわかっているはずだ」

「ああ、わかっている。呪歌はギルドが管理するべきなのは当然だ。だが、このことをギルドが知ったら彼女はどうなる? 自由に生きることができなくなるぞ」

「それはそうだ。だが、呪歌の力を考えたら当然だろう。あれはそのままにしておくには危険すぎる。だからこそ、ギルドが保護下に置いているんじゃないか」


ランスのその声に、アリオンは応えようとはしない。彼にしても、ランスの言い分はよくわかっているからだ。それでも、アフルの力をギルドに報告するということにためらいがある。

その理由が今のアリオンにはわかっていない。それでも、アフルのことをギルドに報告させるわけにはいかない。明確な理由も分らぬまま、彼の中ではそんな思いだけが大きくなる。


「ランス、このことは黙っていてくれ。頼む。アフル様をギルドに渡すわけにはいかない。彼女はこの家の跡取りなんだ」

「アリオン、無茶を言っているのがわかっているのか。彼女の力は隠しきれないぞ。お前でも感じたんだ。ギルドの年寄りやクロード様が聞けば、すぐにわかるぞ」


ランスのその声に、アリオンは顔をしかめている。それは、彼自身もそのことをわかっているという何よりの証拠。だが、それでも彼は諦めきれないといわんばかりの勢いで叫んでいる。


「それでもだ。僕は彼女をギルドに渡したくない。そんなことをすれば、どうなる。彼女は一生をギルドに縛りつけられる。そんなこと、我慢できるはずがない」

「アリオン。お前、自分が何を言っているのかわかっているのか。ギルドに本気で歯向かうつもりか? お前はギルドが呪歌歌いを手に入れるためなら、何でもするのをわかっていないのか?」


アリオンの激情を押さえつけるように、ランスの声が低く響く。それでも、アリオンは自分の感情を抑えることができないような顔でランスに掴みかかっていた。


「教えてくれ。呪歌を封じることはできるのか?」


アリオンの言葉があまりにも唐突だったために、ランスは口をポカンと開けてしまっている。その彼の肩を揺さぶりながら、アリオンは同じことを訊ねていた。


「お前なら、わかるだろう。どうすればいい。どうすれば、アフル様を守ることができる」


その姿は鬼気迫るものといっても言い過ぎではないだろう。

どうして、ここまで一人の少女を守ろうとするのか。その理由がおぼろげにランスにはわかったのか、彼はすっかり興奮しているアリオンの手にそっと手を乗せている。


「わかったよ。まったく、お前の根性と気迫には負けたよ」

「ランス……」


どこか呆れたようなランスの声に、アリオンはどう返事をすればいいのか分からない。ただ、ぼんやりと彼の名前を呟くアリオンに、ランスは仕方がない、というような表情で応えていた。


「言っておくが、呪歌の力は抑えられないぞ。なにしろ、感情と密接に繋がっているんだ。恐怖に駆られて歌を紡げば、それは間違いなく人の命を奪うものになる」

「わかっている。だからこそ、ギルドは呪歌歌いを手に入れようとしている」


呪歌の持つ性格を、アリオンもランスもよく知っている。そして、ギルドが呪歌歌いを手に入れようとする理由も、ギルドの配下に置かれた呪歌歌いがどうなるかもわかっている。

だからこそ、アリオンはアフルのことをギルドに報告したくない。そして、その彼の思いに応えるような言葉をランスは口にしている。


「約束するよ。俺からはギルドに何も言わない。それでいいんだろう。だがな、あのお嬢さんの力は強すぎる。ギルドに噂が届くのも時間の問題だと思うぞ。それでもか? 本気でギルドに歯向かうつもりか?」


ランスの言葉にアリオンはニヤリと笑うと、当然だという顔をしている。その彼をみたランスは、諦めるしかないのだということを本能的に感じていた。


「わかったよ。そりゃ、俺だって貴族の令嬢を無理矢理、ギルドに入れたいとは思わないよ。仕方がない。お前の無謀な挑戦に協力してやるよ。まったく、こんなことがギルドにばれたら、俺もお前も追放だっていうことわかっているんだろうな」

「わかってるさ。それでも、僕はアフル様を守りたい。たとえ、何があろうとも、彼女を守りたい。それがこうやって彼女と一緒にいる、僕の役目だと思っている」


その言葉にランスは大きくため息をついている。そんな彼を見つめるアリオンの表情には、どこかふてぶてしい光があるのも間違いではなかった。






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