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「DIVA」
呪歌と姫君

詩人の恋 【2】

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すっかり拗ねたようになったアフルは、投げやりな調子でそう言いながら、アリオンの様子をうかがっている。それをみたアリオンは、笑いをこらえることができなくなっていた。


「アフル様。そんな顔をなさらずに。可愛らしい顔が台無しですよ。また、夜になったら一緒に竪琴の練習をしましょう」

「わかったわ。約束よ」


そう言ったアフルは、アリオンに小指を差し出している。約束を求める子供らしい仕草に、彼は視線を彼女の目の位置に合わせると、笑いながら互いの小指を絡めていた。


「あ、そうだ。ちょっとだけ、聞いて」

「何をですか?」


突然のアフルの言葉に、アリオンは不思議そうな表情を浮かべる。その彼に、アフルはちょっとはにかんだような様子で言葉を続けていた。


「あのね。この前、教えてもらった歌。練習してみたの。ちょっとだけでいいから、聞いてちょうだい」


アフルがこのように言い出したら、絶対に後には引かないことをアリオンはよく知っている。まだ家庭教師が来るには時間があると思った彼は、仕方がないというように頷いていた。

その姿をみたアフルが、顔を輝かせて歌を紡ぎ始める。そして、その歌声に引き寄せられるかのように窓辺に小鳥が近寄ってくるのをアリオンは見逃していなかった。


「あれは?」


しかし、それはほんの一瞬のこと。歌が終わる頃には、小鳥はその姿を消している。しかし、そのことはアリオンの中に小さな不安の芽となっていた。


「アリオン、どうかしたの?」

「いえ、なんでもありません。しかし、上手になられましたね。さ、そろそろ先生がおみえになられます。ちゃんと準備をしてくださいよ」


アリオンのその声にアフルは頷くと、自分の部屋へと足を向けている。その彼女を見送ったアリオンは、どうすればいいだろうかと考え込み始めていた。

先ほど、一瞬だけ目にした様子は彼にとって、不安を感じさせるものでしかない。たしかに、小鳥が歌に引き寄せられるように窓辺に寄ってくるのは考えられないことではない。だが、先ほどの小鳥の様子は、普通によってきたものとは違うように彼には感じられたのだ。


「まさか、アフル様がな……」


アリオンのその呟きは、誰かの耳に入ることはないくらい小さい。そして、彼はどうすればいいのだろうかというように首を傾げていた。

やがて、その顔が何かを思い出したように明るくなってくる。彼は、先日、外出した時に姿をみた相手のことを思い出していたのだ。


「そうだ。あいつに相談すればいいんだ。あいつなら、絶対にわかるはずだ。そういう家系なんだからな」


ようやく、どうすればいいのか分かったアリオンは、どこかホッとしたような表情を浮かべている。屋敷の執事に「少し出かける」と告げた彼は、手早く身支度をすませると街へと足を向けていた。



◇◆◇◆◇



「このあたりだったな」


どこかあやふやな記憶ではあるが、あちこち歩いている間に思い出したのか、アリオンの表情は安心したものになっている。その原因がかすかに聞こえてくる竪琴と歌声であることは間違いない。

こんな昼間から歌うあたり、とことん吟遊詩人の性が身についている、と苦笑したアリオンは音のする場所へとためらうことなく入っていた。

そこは、夜になると居酒屋になるのだろう。もっとも、日の高い今の時間に大っぴらに酒が出されるはずもない。人々は食事とお喋りを楽しみながら、時間を過ごしていた。

それに花を添えているのが、吟遊詩人の歌声。その相手の顔を確かめたアリオンはクスリと笑うと、人々の間をすり抜けるようにして詩人に近寄る。

やがて、曲が終わり、大きく一礼した相手の肩を、アリオンはポンと叩いていた。


「よ、ランス。久しぶりだな。元気にしてたか」


急に肩を叩かれ、声をかけられたことに驚いたような表情を向ける相手だが、それがアリオンだということに気がついた途端、相手の相好は喜びに崩れていた。


「アリオンじゃないか。お前がこんなところに来るなんてな。この頃じゃ、ギルドの方にもあまり顔を出さないそうじゃないか」


その声にアリオンは苦笑を浮かべている。たしかに、今の彼は滅多にギルドに顔を出すことはない。だが、今でもギルドの一員だという意識のある彼は、ちょっとムキになって反論していた。


「このところ、お呼びがかからないからさ。それよりも、今、いいか?」


アリオンのその声に何かを感じたランスは軽く頷くと竪琴を横に置いている。それを見たアリオンは、適当に注文をすると手近な椅子に腰をおろしていた。

その様子をみた店主が、注文の品を山盛りにして持ってくる。それに対して、アリオンはしばらく二人きりにしてくれるようにと頼んでいた。


「で、どうしたんだ? お前がここまで来るなんて、何かがあったんだろう?」


そんなランスの声に、アリオンは応えようとしない。ただ、目の前に置かれた料理や飲み物に手を伸ばすだけ。そんな彼の姿を見たランスは肩をすくめながら、自分も同じように手を伸ばしていた。

それでも、いつまでも黙っていることができないのをアリオンはわかっている。お互いにある程度、飲み食いをしたあたりで、アリオンは真剣な目でランスの顔をみつめていた。


「聞きたいことがあるんだ」

「ん? なんだ?」


ようやく、アリオンが口を開いたことに内心ホッとしながらも、そんな様子をランスは見せることもない。そんな彼の態度にどこか安心したような顔で、アリオンは言葉を続けていた。


「お前、呪歌歌いがわかるとか言っていたな」


その声に、ランスは食べていたものを喉に詰めそうになっている。あわてて、飲み物でそれを飲み下した彼は、焦ったような顔でアリオンをみつめていた。


「おい、こんなところでその話をするな。誰が聞いているかわからないんだぞ」

「ああ、それくらいわかっている。でも、確かめたかったんだ」


その声にランスは大きくため息をついている。そのまま、飲み物が入ったグラスに手を伸ばした彼は、あたりをさりげなく見渡すと、誰も側にいないことを確認していた。


「ま、誰も聞いていないようだからな。その代り、手短に済ませろよ。どこに耳があるのかわからないんだからな」


その声にアリオンも軽く頷くと、ランスと同じように店内に素早く目をやっている。その様子は彼自身もランスの言葉を確かめるかのよう。

そして、ランスの顔を再びみたアリオンの瞳には、どこか悩んだような色が浮かんでいる。それをランスは見逃すはずもなかった。


「一体、どうしたんだ。急に呪歌のことを聞いてきたりして。このことは大っぴらに話せることじゃないんだぞ」


その声は、人に聞かれることを恐れるようになっている。それに対して、アリオンも同じように囁きかける声で応えていた。


「わかっている。だが、このことはお前にしか相談できないから」


そう告げるアリオンの表情は強張ったものになっている。その姿から、なにか深刻な話だ、と判断したランスは持っていたグラスの中身を一気にあおると、真剣な目でアリオンの顔をじっとみつめていた。


「聞いてやるよ。だから、早く話せ。お前だって、あまり時間があるわけじゃないんだろう」


アリオンが貴族の家に住み込みでいることをランスは知っている。となると、勝手に遅い時間までフラフラすることもできないだろう。

そう思った彼は、アリオンが話をしやすいようにと水を向けていた。それに対して頷いたアリオンは、思い切ったような顔で呟いている。


「急な話で悪い。だが、明日、ザフィーラ家に来てくれないか。伯爵には話を通しておく。どうしても、お前に相談したいことがあるんだ」

「まったく……急に何を言い出すんだ」


アリオンの言葉に、ランスは思わず顔をしかめる。しかし、彼の口調には反論できないものも感じたのだろう。仕方がないといった表情を浮かべている。


「わかったよ。じゃあ、お前の招待にのってやるよ。たしかに、貴族の屋敷っていうものに興味がないっていっちゃ嘘になるからな」


そう言うと、ランスはまた料理の山と格闘を始めている。それを見たアリオンは、どこか安心したような表情を浮かべていた。



◇◆◇◆◇



その次の日、ランスはアリオンとの約束を果たすべく、ザフィーラ家の門を叩いていた。貴族の屋敷に入るということを意識したのか、彼の姿は小ざっぱりとしたものになっている。

そして、あらかじめ連絡を受けていたのか、大声で開門を求めるランスの声が聞こえたかと思うと、門が大きく開かれていた。


「どうぞ、お入りください。アリオン様からお話は伺っております」


その言葉と同時に、ランスは屋敷の中に招き入れられている。彼は、屋敷の使用人がアリオンに敬称を付けていることに内心驚きながら、平然とした顔で案内されていた。


「ランス、無理を言った。でも、ちゃんと入れただろう?」

「ああ。それより、お前を見なおしたよ。こんなお屋敷の使用人に、アリオン様と呼ばれるなんてな」


ランスのその声に、アリオンは笑うだけで応えようとはしない。そのまま彼はランスを案内すると屋敷の庭園の方に足を向けていた。


「おい、アリオン。相談があるんだろう」


彼がこうやって呼び出した理由は何となくわかっている。それならば、サッサと話をしてしまいたい、という思いがランスにはある。

貴族の屋敷に入ったということで、彼はどこか緊張感を覚えているのだ。そんなランスを気にしないアリオンは、案内する足を止めることなく楽しげに話しかける。


「ああ、相談はあるよ。とにかく、お前に聞いてもらうのが一番、早いと思うからな」




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