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「DIVA」
呪歌と姫君

詩人の恋 【1】

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気持ちのよい朝日が差し込む中、アリオンは再びザフィーラ家の門の前に立っていた。

その姿は先日、この屋敷にやってきた時の彼とは違う。屋敷の令嬢であるアフルの誕生祝に呼ばれていたあの時は、吟遊詩人ということが一目でわかるように、竪琴を小脇に抱えていた。

しかし、今日からの彼は10歳になったアフルの家庭教師として招かれている。そうやって立場が変わったことを示すように、彼は竪琴を荷物の中に入れた状態でやってきていた。


「アリオン様ですね。どうぞ、お入りください」


屋敷の門の前にいた使用人がアリオンをみつけるなり、そう声をかけてくる。その態度の変化にアリオンはどこか居心地の悪いものを感じていた。

だが、相手はそのようなことを気にする気配もない。相手はアリオンの持っていた荷物を半ば強引にひったくると、彼を屋敷の中へと案内していた。


「ちょ、ちょっと待ってください……」


吟遊詩人と令嬢の家庭教師、というのではこんなにも待遇が変わるのだろうか。そんなことを感じたアリオンは焦ったように声をかけている。だが、相手はサッサと屋敷の中に入るようにとアリオンを招いていた。


「や、やっぱり、凄いな……」


先日のお茶会では庭園の中にしか入ることのなかったアリオンにとって、屋敷の中は珍しくて仕方がない。そして、貴族の屋敷の中に堂々と入る機会というものが、新米吟遊詩人であるアリオンにそうそうあるはずがない。

今の彼は好奇心の塊のようになって、あたりをキョロキョロと眺めている。そして、彼は日の光の差し込む、気持ちのいいサンルームに案内されていた。


「旦那様、アリオン様がおみえになられました」


その声に、アリオンは緊張したように体を強張らせている。その彼の緊張がわかるのか、サンルームの中からは穏やかな声が聞こえてきた。


「アリオン、待っていたよ。今回はちょっと無理を言ったと思うが、よく承知してくれた」

「いえ、まさか僕のような若輩者がアフル様の家庭教師を依頼されるとは思ってもいませんでしたので、驚いています。でも、できる限りのことはやらせていただこうと思っています」


アリオンの言葉に、屋敷の主であるザフィーラ伯フェビアンは、穏やかな表情を崩そうとはしていない。その姿に、アリオンはようやく安心したような表情を浮かべていた。

サンルームの中には、フェビアンだけではなくシュゼットとアフルもいる。そのアフルは父親とアリオンの話を聞くと、青い瞳をこれ以上はできないというほど大きく見張っていた。


「お父様、今日からアリオンが私の先生になってくれるんですか?」


その顔には信じられないという色しか浮かんでいない。そんな娘の顔を見たフェビアンは、愛情深い顔で彼女の頭に手をおいていた。


「そうだよ。お前も少しずつでもいろいろなことを覚えないといけない。アリオンからは、竪琴を習うように。アリオン、君が一番の得意はそれだろう。まず、アフルに人前で弾いても恥ずかしくないように竪琴を教えてやってほしい」

「わかりました。でも、他にも何か彼女に教えるんでしょうか。伯爵様のお言葉だとそのように思えますが」


アリオンのその言葉をフェビアンは豪快に笑い飛ばす。彼のそんな姿を目にすると思ってもいなかったアリオンはびっくりしたような表情を浮かべていた。


「伯爵?」


きょとんとしたような表情でそう問いかけるアリオンを見たフェビアンは、すまなかったというような様子になると、態度を改めている。真剣な表情になった彼に、アリオンも同じような様子になっていた。


「君はアフルと年が近いからな。他の学問を教える教師とアフルの中立ちをしてほしい。それに、その年で吟遊詩人をするということは、身寄りもほとんどいないんだろう? だとしたら、住み込みでいてくれればいい。アフルにしても、兄ができたような感じで嬉しいだろうから」

「お父様!」


その声を耳にしたアフルは顔を真っ赤にすると、小さな手で父親の胸をポカポカ叩いている。そんな娘の様子に、フェビアンは楽しそうに笑うとじっとアリオンの返事を待っている。それに対して、彼が返せる言葉は一つしかないといえた。


「そこまでおっしゃっていただけるとは思ってもいませんでした。僕では力不足のところもあるでしょうが、精一杯、務めさせていただきます」

「アリオン、そんなに気を張らなくてもいいのよ。今からそんなに張り切っていたら疲れてしまってよ」


夫とアリオンの話を黙って聞いていたシュゼットが、柔らかい声でそう呟く。それに対してフェビアンは大きく頷くと、アリオンの肩を軽く叩いていた。


「本当にそうだ。何も気を張り詰める必要はない。あくまでも君はアフルの竪琴の教師だ。ただ、住み込みでいてもらうから、それ以外の用事もあるかもしれない。そういう風に思ってもらえばいい」

「ねえ、お父様。アリオンも今日から一緒に住むの?」


アフルの子供らしい声がそこに響いている。クルクルとよく動く青い瞳は、これからの生活に期待を膨らませていることを物語っている。

そんな娘に優しい眼差しを向けたフェビアンは、穏やかな声で返事をしていた。


「そうだよ。今日からアリオンは一緒に暮らすんだよ。そして、お前に竪琴を教えてくれる。やりたかったんだろう? この前、アリオンが帰ってからしつこいくらいにねだっていたからね」

「お父様ったら……私、そんなつもりで言ったんじゃないのに……」


フェビアンの声に、アフルはますます顔を赤くしながらそう言っている。その姿はまるで、子リスか子鳩が甘えるような雰囲気だ、とアリオンは思っていた。彼はスッと視線をアフルに合わせると、正面から彼女の顔を見つめている。


「アフル様、今日から一緒に住まわせていただきます。いろいろなことを一緒にやっていければいいですね」

「ええ、アリオン。なんだか、とっても楽しみだわ」


アリオンの言葉にアフルは満面の笑みを浮かべて応えている。その彼女の愛らしい表情に、アリオンは心からの笑みで応えていた。そんな二人をフェビアンとシュゼットも、穏やかな微笑みを浮かべながらみつめていた。


「アフル様、このあたりでやめてきましょうか」

「どうして? まだ、時間はあると思うけれども?」


穏やかな光の差し込むサンルームの中に、落ち着いた青年の声と可愛らしい少女の声が響いていた。


「そのようにおっしゃらずに。また、夜にお相手させていただきます。もうすぐ、先生がおみえになるのでしょう。その準備をしておかないといけません」

「アリオンの石頭。そんなに堅苦しいこと言わなくてもいいじゃない」


アリオンの声にアフルは拗ねたような顔をするが、それを彼が気にすることはない。アリオンはアフルが持っていた竪琴をすっと取り上げると、部屋の片隅へと持って行っていた。


「アリオン、勝手なことをしないでよ」

「そういうわけにはいきません。アフル様はいろいろなことを学ばなければならないのですから。それに、僕はいつでもお相手できるんですよ。そのことも忘れたんですか?」

「それはそうだけど……」


アリオンがこの屋敷に一緒に住んでいる以上、その言葉は当然のことといえる。しかし、アフルにすれば堅苦しい勉強より、彼と竪琴を弾いている方が楽しいのだ。そのことを訴えかけるように、大きな瞳をウルウルさせながら、彼の顔をみつめている。


「そんな顔をされても無駄ですよ。いつまで、その手が通用すると思っていらしたんですか?」

「アリオンの意地悪。もう知らない」


そう言うなり、アフルはプイっと横を向いてしまっている。そんな彼女を宥めるような口調で、アリオンは声をかけていた。


「一緒に暮させてもらうようになって、どれだけたっていると思っていらっしゃるんです。2年も一緒に生活していれば、アフル様のそのお姿が勉強を怠けようとなさっているからだというのは、すぐにわかりますよ」


アリオンのその言葉に、アフルもついに観念したようになっていた。その表情はまだ拗ねたようなものがあるが、諦めたようにため息をついている。


「でもね。アリオンが歌ってくれる話の方が面白いんですもの。同じことを言っているのに、先生のお話って退屈で仕方がないのよ」


アフルの言葉に、アリオンはやれやれという表情を浮かべている。たしかに12歳の少女に黴(かび)の生えたような歴史の話は難しいかもしれない。

しかし、アフルは名家と謳われるザフィーラ家の跡取りと目されている。国の成り立ちともいえる歴史を知らずにいられることが、許されるはずもなかったのだ。


「でも、アフル様はこういう勉強をなさらなければなりません。そのことはおわかりでしょう」


その声にアフルは形のいい眉をひそめると、小さな肩をすくめている。その姿が彼女なりの抗議活動だと知っているアリオンは、何も言うことなく彼女の顔をじっとみつめていた。


「それくらい、わかっているわ。でも、他の家の女の子は私みたいにいろいろなことをしていないわ」


アリオンが問いかけの言葉を発してから何も言わないことに腹を立てたのか、アフルの声はちょっと怒りを含んだもの。それに対して、アリオンは穏やかな声で応じていた。


「仕方がないですよ。アフル様は、この家の跡取りなんですから。他の家のお嬢様方と同じようにはいきませんよ」

「だったら、アリオンが本当のお兄さんになってくれればいいのよ。そうすれば、私が家を継がなくてもいいわ。お父様だって、そのつもりがあられるんじゃないかしら」


頬を膨らませながらそう呟くアフルの姿に、アリオンは苦笑を浮かべている。たしかに、ザフィーラ家で過ごしている時間は長いが、彼には養子として貴族の家に入るつもりはない。それを証明するような言葉が、彼の口からは漏れていた。


「アフル様、そんな無茶はおっしゃらないでください。僕は自分の分というものはわきまえていますよ。それに、吟遊詩人が貴族の家に養子に入ることが、簡単にできるはずもないでしょう」

「そうなのかしら。つまらないわ」


そう言うと、アフルはますます頬をぷくっとさせる。その姿に微笑ましいものを感じたアリオンは笑いながら、その頬を軽く小突いていた。


「アリオンの意地悪。いいわよ、ちゃんと勉強すればいいんでしょう」




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