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「DIVA」
呪歌と姫君

午後のお茶会 【2】

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「まったく、お前と話していたら悩んでいたのが馬鹿らしいじゃないか。まあ、明日のことを今から悩んでいても仕方がないからな」

「そうだろう? ともかく、今回はお前一人で行くのは決まったことかもしれないが、今度そんな話が出た時は、絶対に俺の名前も出してくれよ」


真剣な顔でそう訴えかけるランスの姿にアリオンは大きく頷きながら笑っている。その彼の表情からは、先ほどまで浮かんでの悩んだような表情は、すっかり影をひそめていた。

そして、翌日の午後。アリオンは愛用の竪琴を小脇に抱えるとザフィーラ家の門を叩いていた。

ファクリスでも名家として名前の知られているザフィーラ家の門構えは堂々としたものがある。そして、その門からかすかに見える屋敷の雰囲気は悪くないとアリオンは思っていた。

しかし、どうやって入ればいいのだろう。

一応、ギルド長のクロードが書いてくれた紹介状は持っている。だが、それを誰に渡せばいいのかわからないアリオンは首を傾げながら門の前をうろうろするだけ。その時、屋敷の中から誰かが出てきたのに気がついたアリオンは大声を出していた。


「すみません! お屋敷の方ですか?」


彼のその声が聞こえたのだろう。屋敷から出てきた相手はゆったりとした足取りでアリオンに近づいてくる。その相手の着ているものが、貴族のそれに似ていると思ったアリオンはちょっと緊張を覚えていた。だが、相手はそんなアリオンの思いに気がつかないように近寄っていく。


「お待たせいたしました。ギルドから派遣されてきたお方ですね」


その口調が穏やかで腰の低いものだと感じたアリオンはコクコクと首を振るとクロードの書いた紹介状を差し出していた。それを受け取った相手は、表書きと裏の封蝋を確かめると大きく門を開き、アリオンを招き入れる。


「旦那様がお待ちかねです。ご案内いたしますので、ついてきてください」


そう言うとにっこり笑ってアリオンを手招きする相手。それに促されるように敷地の中に足を踏み入れたアリオンはどうなるのかという不安と、貴族の屋敷の中に入ったのだという好奇心の両方が渦巻いているのを感じていた。


「あの、どこまで行くんでしょうか」


門を入ってからかなり歩いたと思うのに、屋敷の主人たちのいるところには到着しない。そのことに不安を感じたアリオンはそう問いかけていた。


「もう少しです。旦那様も奥様も庭の奥の方におられますからね。あ、お名前をお訊きしてもよろしいでしょうか」


穏やかな口調と態度で返される言葉にアリオンはちょっと驚いたような表情を浮かべている。新米の吟遊詩人である彼がこのように丁寧な扱いを受けるとは思ってもいなかったのだ。


「あ、アリオンといいます。でも、どうして、そんなに丁寧に相手をしてくれるんですか?」


アリオンのその声に相手は口元を軽く上げたまま、応えようとはしない。その姿にしまった、というような思いを抱いたアリオンだが、相手は気にする様子もみせていない。そのことに、どこか安心した表情を浮かべ、彼は案内されるままに歩き続けていた。

庭に植えられている木や花はよく手入れがされていると見えてどれも生き生きとしている。ところどころに配置されているベンチやテーブルが醸し出す雰囲気も上品なもの。

それは、貴族の生活の豊かさをアリオンに見せつけるものといえる。そして、屋敷で働いている使用人たちの穏やかな雰囲気も、アリオンにその思いを抱かせるに十分なものだった。

彼がそんなことを考えながら歩いていた時、前を歩いていた相手が軽く足を止めた。そして、アリオンを導くように腰を折ると、穏やかな声でその場にいた相手に声をかける。


「旦那様、お待ちかねの吟遊詩人が参りました」


その声にアリオンははっとしたように前に視線を向ける。そこにあるテーブルに座っていたのは、幸せな家族の肖像というのがピッタリの三人の姿だった。

力強い光をその双眸(そうぼう)に宿らせた男が中央に座っている。その隣には、淑やかな微笑みを浮かべた上品な婦人。そして、彼らの子供であるのだろう。明るい笑顔を浮かべた少女がちょこんと座っていた。

その少女はアリオンの姿を見るなり目を輝かせると、席を立っていた。明るい金髪が日の光を受けてキラキラと輝き、青い瞳は宝石のようにきらめいている。

その少女の姿からアリオンは目が離せなくなっていた。それでも、この場の主に挨拶をしなければならないことは本能的に分かっている。彼は意識をその少女から切り替えると、旦那様と呼ばれた相手に向き直っていた。


「このたびはお声をかけていただき、まことにありがとうございました。ギルドより派遣されましたアリオンと申します。若輩者ではありますが、本日は精一杯のことをさせていただきます。伯爵様や奥方様、そしてお嬢様に楽しんでいただければと思っております」


そう挨拶したアリオンは、深々と頭を下げている。そんな彼にザフィーラ伯フェビアンは気にすることはないというように軽く手を振っていた。


「そのように緊張する必要はない。今日はアフルの誕生日ということでこの子を楽しませてくれればいい。しかし、クロードもいい相手を選んでくれたようだ。君のように若い詩人がいるとは思ってもいなかった」


そう言うとフェビアンは椅子から立ち上がったアフルの髪をやさしく撫でている。その様子が穏やかで温かいものであることに気がついたアリオンは、肩の力が抜けてくるのを感じていた。


「あ、それでは早速、歌わせていただきます。今日は誕生祝ということですので、楽しんでいただけるような曲を選ばせてもらいました」


そう言うとアリオンは竪琴の調子を合わせると歌い始めている。明るい声と澄み切った竪琴の音が庭の中を流れていく。

高く低く流れる歌声は聴いている者の耳を楽しませるのは間違いない。アリオンの歌声にアフルは顔を輝かせながら聞き入り、彼女の両親であるフェビアンとシュゼットも満足したような表情を浮かべる。

やがて、一曲を終えたアリオンが大きく礼をすると、アフルは小さな手を一生懸命に叩いて喜びを表現する。その姿にアリオンは言葉にすることのできない喜びを感じると、彼女のそれに負けないような笑顔を浮かべていた。


「喜んでもらえて本当に嬉しいです。そして、アフル様、お誕生日おめでとうございます」

「あ、ありがとうございます。そして、私の方こそお礼を言わないと」

「どうしてですか?」


アフルの言葉の意味がアリオンにはわからなかったのだろう。彼はきょとんとした顔でアフルに問いかけている。そんな彼にアフルはちょっと頬を赤らめながらこたえていた。


「だって、こんなに素敵な歌を聞かせてもらえるなんて思ってもいなかったんですもの。お礼を言うのは当然じゃないかしら」


子供らしい無邪気な声と仕草でアフルはアリオンの顔をじっとみつめている。正直でまっすぐなその視線に、今度はアリオンの方が顔を赤くしてしまっていた。


「え、えっと……その……」

「おやおや、そんなことでは吟遊詩人としてはやっていかないんじゃないのかな? 褒め言葉を聞いただけでそんな顔をする詩人は見たことがないよ」


アリオンの様子をみていたフェビアンのからかうような声に、ますます彼の顔は赤くなっていく。そんな彼に優しく声をかけてきた相手がいた。


「あなた、そんなにからかっちゃいけませんわ。アリオンだったわね。本当に上手だったわよ」

「ありがとうございます。そのようなお言葉がいただけるとは思ってもいませんでした」


シュゼットの言葉にアリオンはすっかりどぎまぎしてしまっている。初めて入った貴族の家で、このような言葉をもらえるとは思ってもいなかったのだろう。そんな時、アフルがクイッとアリオンの服の裾を引っ張っていた。


「ねえ、もっとお歌を聞かせて。いいでしょう?」


そう言ってちょこんと小首を傾げる姿は子鳩が何かをねだるようにもみえる。その姿を可愛らしいと思ったアリオンは改めて竪琴を弾き始めていた。

優しいだけの音だと思っていたが、アリオンの竪琴はそれだけではない。凛とした力強さもそこにはある。それを聞いただけでは、彼がまだ15歳の独り立ちをしたばかりの詩人とは思えない。ザフィーラ家の人々は魅入られたようにその歌声に聞き入っていた。


「ねえ、アリオン。次は何を歌ってくれるの?」


無邪気にアリオンに問い掛けるアフルの声。それに対して、アリオンは疲れることなく、歌い続けている。その様子をフェビアンとシュゼットは微笑ましげに見つめていた。

そして、アフルは初めて会った吟遊詩人にすっかり夢中になっていた。

彼女は飽きることもないようにアリオンに曲をねだり、その合間にはいろいろな話をせがんでいる。大きな青い瞳をキラキラさせる彼女の姿は子犬が甘えるように見えたのか、アリオンは休みことなくその求めに応じていた。


「アフル、そんなに無茶を言ってはダメよ。アリオンが疲れているんじゃないかしら」


いつまでたってもアフルがアリオンを離そうとしないことに、シュゼットが呆れたような顔をしている。母親のその声にアフルは頬を膨らませるとプイっと横を向いてしまっていた。


「だって、こんなに楽しい時って初めてなんですもの」

「奥様、ご心配には及びません。僕も楽しんでさせていただいているんです。アフル様、次は何の曲がいいですか?」


アリオンのその声にアフルの顔が一気に輝き、シュゼットは大きくため息をついている。そんな妻と娘の姿に、フェビアンは笑いをこらえることができないようだった。


「シュゼット、今のアフルが大人しく言うことを聞くはずがないだろう。もうちょっとこのままにしておおき」

「でも……」


フェビアンの声にシュゼットは悩ましげな色を浮かべている。そこにはアフルに振り回されているアリオンのことを心配するような表情がある。それを見たフェビアンは心配することはない、というような顔を向けていた。


「アフルの我儘で疲れてしまうほど柔(やわ)な相手をクロードが寄こすはずがないよ。彼もアフルが好奇心旺盛なのはよく知っているだろうからね。あまり、我儘が酷くなると思ったらやめさせる。だから、お前も今日は楽しみなさい」


そこまで言われると、シュゼットも何も言うことができない。彼女は改めてアフルの相手をしているアリオンの様子をうかがっていた。

たしかに、フェビアンが言うように彼が疲れている様子はまだ見えない。アフルが求める曲を軽やかに奏で続けるその姿をシュゼットは微笑を浮かべながら眺めていた。




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