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「DIVA」
呪歌と姫君

午後のお茶会 【1】

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その日、ギルド長であるクロードに呼び出されたアリオンは、不安を隠せない表情で廊下を歩いていた。

つい先日、独り立ちしたばかりの新米詩人である彼にギルド長から声がかかる。それは致命的な失敗を意味しているのではないか、という思いだけが彼の内にはある。ここ数日の仕事の内容を思い出しながら歩いていたアリオンは、どうすればいいのかわからなくなっていた。

明るい茶色の髪が不安そうに揺れ、薄茶の瞳は何かを警戒する子リスのようにあたりをキョロキョロと眺めている。それでも、このままでいることはできない。彼は廊下の突き当たりにある大きな扉を思い切って叩いていた。


「クロード様、アリオンです。入ります」


こうなったら、何を言われても「ごもっともです」と返事をするしかない。15歳という若さの割には開き直ったともいえる思いで彼は部屋の中に足を踏み入れていた。

その部屋の中、大きな机を前にした恰幅のいい姿の男は椅子に腰かけ、アリオンをじっと見つめている。背後から入ってくる日の光が相手の姿を照らし出し、いやでも権威を感じさせる。

これがギルド長であるクロードの狙いであり、その姿をみた相手は『蛇に睨まれた蛙』といってもいい状態になるのだ。

その効果は、この部屋に数えるほどしか入ったことのないアリオンには絶大なもの。先ほどまでの開き直りが嘘のように、アリオンはおどおどした様子でクロードの前に立っていた。


「クロード様、お呼びだと伺ったのですが……僕は何かヘマでもしたんでしょうか……」


アリオンが入ってきたというのに、クロードは興味もないような表情しか浮かべない。本当に

彼に呼ばれたのだろうかという不安だけがアリオンの中に膨らんでくる。そんな彼の不安が絶好調に達したとき、ギルド長であるクロードはゆっくりと口を開いていた。


「いや、何もお前はヘマをしていないぞ。心配することはない」


豪快なその声にアリオンはようやくホッとしたような表情になっている。それまで不安そうに動き回っていた薄茶の瞳がようやく動きを止める。クロードに見つからないように安堵の息をついたつもりだったが、その様子をクロードはちゃんと視界の隅におさめていた。


「おいおい、俺が呼んだから何かお小言をもらうと思っていたのか?」


そう言って笑い飛ばす姿は、ギルド長という権威あるものとは少々離れているようにみえる。それはクロード自身もまだ現役の吟遊詩人ということが最大の原因。陽気で面倒見のいいギルド長は、多くの詩人たちから慕われる存在でもあった。


「とにかく、話を進めようか」


アリオンの様子など気にしたところもなく、クロードは声をかけてくる。それに対して頷くことしかできないアリオンは、彼の言葉をじっと待っていた。


「お前、ザフィーラ家を知っているな」


その言葉は反論というものを考えていない声。そして、アリオンはクロードの口にした家名に思わず息を飲んでいた。


「た、たしかに、ザフィーラ家は知っていますが」


焦ったようなアリオンの声に、クロードはカラカラと笑い出している。そんな彼の姿にちょっとむくれたような顔をアリオンは見せていた。


「いくら僕が新米でも、ザフィーラ家がギルドにいろいろと寄付をしてくれているのは知っています。で、そのザフィーラ家がどうかしたのですか?」


クロードがなかなか用件を口にしないことに、ちょっと不満気な色をアリオンは浮かべている。そんな彼にクロードは笑いながら応えていた。


「明日、そのザフィーラ家に行ってくれるな。悪いが、連れはいないからな」

「はい。って、それは僕だけですか?」


クロードの言葉の意味がわかった途端、アリオンは素っ頓狂な声を出している。まさか、新米の自分がギルドの支援者の家に一人で行くということがあるなどとは思わなかったのだ。

部屋に入ってきた時以上の不安を感じたアリオンの顔色はすっかり悪くなり、体もがちがちと震えている。そんなアリオンの姿を見たクロードはどこか呆れたような声を出していた。


「おいおい。ザフィーラ家に行くだけでそんなにビビってどうするんだ。たしかにあの家は貴族だ。だが、俺たち吟遊詩人は呼ばれれば王様の前でも堂々と歌わないといけないんだぞ」

「クロード様の言いたいことはわかります。でも、僕みたいな新米が一人でザフィーラ家に行って、失礼じゃないんですか?」


アリオンは感じている不安をはっきりと言葉にしている。クロードという人物を相手にする時には、そうするのが一番、手っ取り早いからだ。そして、彼の訴えを耳にしたクロードはひょいと首を傾げると片肘をついていた。


「気にすることはない。今回の仕事は、あそこの令嬢の誕生祝に歌を歌うってことだからな」

「え、それって責任重大なんじゃないんですか? 僕みたいな新米でもいいんですか?」


仕事の内容をクロードの口からきいたアリオンは顔色が紙のように青白くなってくる。誕生祝というものはそれでなくても華やかなもの。ましてや、ザフィーラ家というのは名門といわれる伯爵家。そこの令嬢の誕生祝がどんなものかは考えるまでもない。

それなのに、どうして新米の自分一人なのかと言いたげな表情をアリオンは浮かべている。そんな彼の無言の訴えをクロードは軽く一蹴することに決めていた。


「そんなに肩肘張る必要はないからな。誕生祝といっても、人を呼んでいるわけじゃない。フェビアン様もシュゼット様も気さくな方たちだ。令嬢と年の変わらないお前がいけば、喜んでくださるさ」

「え、そうなんですか?」


クロードの言葉にアリオンは驚いたような声をあげている。まさか、貴族の令嬢の誕生祝に誰も招待客がいないはずはないと思っていたからだ。まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているアリオンに、クロードは種明かしをするように言葉を続ける。


「明日の誕生祝は家族だけのお茶会だそうだ。だから、お前で十分なんだよ」

「誕生祝ってそんなに簡単でいいんですか?」


クロードの言葉にアリオンは不満そうな口ぶりで返事をする。貴族ならば娘の誕生祝を盛大に祝うのではないか、というような雰囲気がそこにはある。そんな彼を宥めるような言葉をクロードは口にしていた。


「お前は知らないのか。ザフィーラ家の令嬢は10歳になったばかりだよ。まだ公式にデビューもしていないんだ。身内だけのお茶会でもおかしくないさ」

「そ、そういうものですか……」


クロードの言葉にこれ以上、反論することは許されない。アリオンは本能的にそう悟っていた。となると、彼にできることはサッサとその場から逃げだすことだけ。彼は適当に相槌を打ちながら、その場からそそくさと逃げ出していた。


「まったく……クロード様も無茶を言うな……」


なんとかクロードの部屋から逃げ出すことに成功したアリオンはそう呟くことしかできない。彼にすれば、明日の仕事のことを考えると気が滅入ってくるとしか言いようがないからだ。

どうして、一人で貴族の屋敷に行かなくてはいけないのだろう。そんな思いだけがアリオンの中では大きくなっていく。

気心の知れた相手が一緒にいればいいのに、ということだけをアリオンは考えていた。そんな彼の耳に陽気な声が飛び込んでくる。


「アリオン、えらく辛気臭い顔をしているな」


そう言って肩を叩いてくる相手の手をアリオンはグイッと掴んでいる。その行動が予測外のものだったのか、相手は思わず顔をしかめていた。


「おい、アリオン。暴力反対っていつも言っていないか?」

「お前にそう言われる理由はないと思うな、ランス。そうじゃないのか?」


アリオンのその声にランスは肩をすくめている。その姿がいかにも人を食ったようなものであるため、アリオンは大きくため息をつくことしかできなかった。


「アリオン、何か言いたいのか?」

「別に。お前に何を言ったって仕方がないっていうことは学習しているし」

「あ、その言い方って酷いな。ちょっと傷つくぞ」


そう言うとランスはアリオンの肩にもたれかかってくる。傷つくといいながらその表情が笑っていることにアリオンは苦笑を浮かべるしかできなかった。


「お前との付き合いも何年になるんだ? お前の性格くらい、ちゃんと理解しているよ」


そう言うとアリオンはランスを振り払うようにして歩き始める。その姿に何かがあると勘付いたランスは、アリオンに問い掛けの声を投げていた。


「さっき、クロード様の部屋から出てきただろう。何かあったのか?」

「まったく、いつも思うが本当に目が早いな」


アリオンのその声に、ランスは「当り前だろう」と言うように、腰に手を当てて笑っていた。人懐っこい光を浮かべる黒い瞳は、彼が根っからの吟遊詩人だということを物語っている。

ひとしきり笑った後で、ランスはアリオンの顔を正面から見つめていた。黒い髪と瞳が茶色の髪と薄茶の瞳をみすえる。その表情にアリオンはお手上げというような表情を浮かべていた。


「何が訊きたいんだ?」

「クロード様に何を言われたのかと思ってさ。なにしろ、今にも死にそうな顔色をしているんだからな」


その声にアリオンは焦ったような表情になっていた。その様子がおかしかったのか、ランスはまた笑い始めている。


「おい、そんなに笑うな。お前だって、この話を聞いたら僕の気持ちがわかると思うぞ」

「だから、その話は何だって言うんだ。勿体ぶらずに教えろって」


そこまで言われるとアリオンも後には引けなくなってくる。彼は軽くランスの顔を睨みつけると、クロードに言われたことを口にしていた。


「明日、ザフィーラ家に行って来いって」


その声にランスはヒューっと口笛を吹くと、凄いじゃないか、というような表情を浮かべている。その彼の反応に、アリオンはまた落ち込みたくなる気分になっていた。


「お前、わかっているのか? クロード様は一人で行けって言ってるんだぞ。貴族の屋敷に僕みたいな新米が一人で行って無事に済むと思っているのか?」

「アリオンなら大丈夫だって。クロード様もそう思っているから声をかけたんだろうし。だがな、だったらどうして俺に声がかからなかったんだ。俺もお前と同い年なんだから、問題ないと思うのにな」


いかにも口惜しそうにそう言うランスの姿に、アリオンは笑いをこらえることができない。先ほどまでの沈んだ気持ちがどこかにいったのを感じたアリオンは、思わず笑い出していた。




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