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「DIVA」
短編集

それぞれの道 【1】

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「これ以上、お話しすることはないでしょう。お引取りを」

「伯爵、そのようにおっしゃられるものではありませんでしょう。これは重大な問題であることだということをお分かりではないのですか」

「あなた方のおっしゃることの意味はわかっています。しかし、答えが変わるはずがないのですから、お引取りいただきたい」


そういうなり、それ以上の話は無駄といわんばかりに席を立つ男の様子に、相手も渋々ながら席を立つしかない。しかし、諦めきれないというように食い下がっている。


「ご令嬢の力は計り知れぬものです。そして、あの力がそのまま放置されるということがどれほど危険かということが伯爵には理解いただけないのですか」

「何度も繰り返す必要はありません。アフルは我が家の跡取り。その大切な娘をギルドに渡す必要がありますか? そちらこそ無茶を言っているのだということをわかっていただきたい」

「呪歌の歌い手を放置しておくわけには参りません。それは、よくおわかりのはず」

「たとえそうであろうとも、アフルはギルドには渡しません。そして、あの子が力を暴走させることなどあるはずがないでしょう。これ以上、無理をおっしゃるというのならば陛下の前で決着をつけてもよろしいのです。そうなると不利はそちらでしょう。陛下とて、我が家の唯一の跡取りを呪歌うたいだというだけで、ギルドに所属させよと御命じにはならないでしょう」


これが最後の返事とばかりにそう言い切った相手は後ろを振り向くことなく、部屋を出て行っている。残された形となった訪問者はこの屋敷の主のそこまでの拒絶が信じられないような面持ちでその場に呆然と立ち尽くしているようだった。

そこはファクリスでも名高い貴族の屋敷。代々王家に仕え、信頼も厚い一族である。問題はこの一族の唯一の跡取りともいえる娘がある特別の力を持っていることが判明したこと。

呪歌とも呼ばれるその力は聞くものを幸せにする力があるといわれている。そして、吟遊詩人のギルドに所属するものの中にはこの歌を歌えるものが少ないながらも歴然と存在している。この歌は小鳥や動物をも呼び寄せることができる、ある意味、不思議な力ともいえるもの。

しかし、呪歌という言葉が示すように、この力には負の一面も存在する。恐怖、動揺、不安……そのような感情のままに紡がれた歌はそれを耳にしたものの命までをも奪うという、呪われた歌。だからこそ、ギルドは呪歌を紡げる者は自分たちの管理下におかねばならぬと思っているのだった。

そんな中、ギルドの長が偶然、耳にした信じがたい噂。それは、ここファクリスの貴族の娘が呪歌を紡ぐことができるというものであった。それは到底、信じることが出来ない噂ではあるが、放置しておくにはあまりにも重大すぎる。そう判断した彼は、真偽を確認するために、問題の貴族の屋敷に赴いているのだった。

そして、彼がその場で目にしたのは噂が真実だったという事実。問題の貴族、ジェミニ伯爵邸の前を通った彼の耳には間違いなく力のある呪歌の響きがとびこんできていたのだった。

ことの事態を重くみた彼は早速に屋敷の主人であり、問題の娘の父親でもあるジェミニ伯爵ミハイルに会う機会を手に入れていた。そして、娘であるアフルのギルド所属を申し入れたのだが、その場であっけなく断られてしまったのだった。

ミハイルの意思が頑強なのをしみじみと感じた相手は溜め息をつきながらも、屋敷を辞するしか方法はない。そして、ミハイル自身も確認したいことがあるのだろう。屋敷に滞在している吟遊詩人であり、娘の竪琴の教師でもあるアリオンを自室に呼び寄せているのだった。


「伯爵、どうかなさいましたか」


先ほど、屋敷に来ていたのがギルドの長だということに気がついていたアリオンは、ミハイルが何のために自分を呼んだのか薄々、気付きながらもそう言っているのだった。


「少しききたいことがあったからな。今、アフルは?」

「いつもの東屋で竪琴の練習をしています。しかし、彼女の進歩は目を見張るものがあります」


ミハイルのききたいことがそのようなことではないことを十分、承知しながらもアリオンはそう言っているのだった。アリオンのその言葉に思わず嘆息をもらしているミハイル。


「そうか……で、先ほどまで、ギルドの長がきていたということには気がついていたかな」


ミハイルのその言葉にアリオンは頷くしかない。ここで隠すということは不自然なこと。


「はい。長にしてみれば、このところ呪歌の歌い手も減っていることですし、どうしてもという思いもあるのでしょうが……」

「断ったよ。あの子が呪歌うたいかも知れないと思ったときにギルドに連絡しなかったのは私だ。つまり、私はあの子を手放すつもりはないということだよ」

「伯爵、それは無謀というものでしょう。呪歌がどれほどの力をもっているのかご存じないはずはないでしょう」


アリオンのその言葉にミハイルは微笑を浮かべているだけ。たしかに彼はアリオンが言うとおり、呪歌というものが持っている力のことを承知している。しかし、彼はギルドが呪歌うたいを必死になって集める理由もおぼろげながら理解している。

歌い手の精神状態一つで強力な武器ともなる呪歌。それを操る人間を一人でも多く手に入れたいと願うのは権力者の望みとも繋がるのだろう。そして、呪歌うたいの力は基本的には親から子へと伝えられていくもの。そういう意味では突然変異ともいえるアフルの力をギルドが取り込みたいと思うのはいたし方がないこととミハイルは思っているようだった。

しかし、そうである以上、アフルをギルドに渡すということは、彼女の自由と未来のすべてを閉ざすものだということも感じている。より強力な呪歌うたいの家系を手に入れたいギルドにとって、アフルという才能がどれほど魅力的かはいうまでもないことなのだろう。


「あの子の才能はギルドの中であれば安全に導かれるだろう。それがわからない私ではないよ。しかし、それと引き換えにあの子はすべての可能性を閉ざされる」

「伯爵……」


自分がアフルの才能に気がついたときに思ったのと同じことを父親であるミハイルも感じているということをアリオンは敏感に感じていた。そして、ミハイルの言葉の調子から、彼が考えていることが自分と同じなのではないかということも感じないではない。


「アリオン、無茶は承知で頼んでいる。あの子を守ってやって欲しい。私たちではギルドの中のこともあの子の力のこともほとんどわからない。しかし、君ならそれがわかるだろう。頼んでもいいだろうか」


ミハイルのその言葉に、アリオンは頷くことしかできないようだった。

「出来る限りのことはします。そのつもりで僕からもギルドの方には報告はしていませんでしたから」


アリオンのその言葉に一瞬、驚いたような顔をしたミハイルだが、それが彼なりにアフルのことを考えての行動だということをわかったのだろう。安堵するような光がその瞳には宿っているようだった。

そして、ミハイルの頑強なまでの拒絶の意思が強いことを察したらしいギルドではあったが、それでもアフルの持っている力に対する魅力は強いものなのだろう。それ以来、何度となくアフルをギルドにという話がジェミニ伯邸には届けられるようになっていた。そのすべてを丁寧に断り続けているミハイルではあったが、そろそろその我慢も限界に達しようとしているようだった。

アフルを手放すつもりはミハイルには毛頭あるはずがない。彼女が伯爵家を継ぐべき唯一の存在であるというだけではなく、彼女のことを呪歌うたいの家系を作るための道具としてしかみようとしないギルドの考えにとことん嫌気がさしているというのも原因の一つ。そんな中、アフルはまもなく13の誕生日を迎えようとしているのだった。

そろそろ思春期と呼ばれる時期に彼女がさしかかっているということに一抹の不安を抱かないでもないアリオンは、なにくれとなくアフルの様子に気を配っている。思春期と呼ばれるこの時期を何事もなく通過することができれば、アフルの呪歌の力はそれほど恐れるものではないだろうということをアリオンは思っているからでもある。

この時期にさえ、力を暴走させることがなければ、アフルはこのまま穏やかな生活を過ごすことができるだろうと、ミハイルもアリオンも思っていたのだった。しかし、そんな考えも甘いものだということを思い知らされるようなことが起ころうとしていることをミハイルもアリオンも気がついてはいなかったのだった。






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