「Sketch」
Vol.1
密やかな宣戦布告
ふわり、と風が揺れる。その風が吹き抜けた先で、男が二人、睨み合いの応酬を繰り広げていた。どちらも、目立つことは間違いのない容姿。
もっとも、眼鏡をかけた方の男は、こういうことをするようなタイプにはみえない。しかし、彼はどこか冷たい視線で目の前の男を睨みつけている。そして、その口からは刺々しい声が漏れていた。
「どうして、あなたがここにいるんですか?」
その声に、相手はフンと鼻をならすと軽く肩をゆする。その姿は、自分に絶対の自信をもっているかのよう。そのまま、彼は投げかけられた言葉に応えていた。
「その質問、そっくり返してやろうか? まさか、達也とここで会うとは思わなかったからな」
その声に、達也はキッと唇を噛むと、相手の顔を睨みつける。そんな彼をみた相手の男は、どこか楽しそうな声を出していた。
「そんなに俺と会うのが嫌だったのか?」
「当り前じゃないですか。奥寺先輩と関わりあって、碌なことがあったことはないんですからね」
「そうだったかな?」
達也の言葉に、奥寺はすっとぼけた顔で応えるだけ。そんな彼の様子に、達也は苛々したような調子で言葉を続ける。
「そうですよ。もう、先輩とは会わなくてもすむと思って安心していたのに……」
ぶっきら棒な口調で紡がれる言葉に、奥寺は何も応えようとはしない。それでも、達也の反応がおかしいのか肩を小刻みに揺らしながら笑っている。
そうやって、男が二人で睨み合っている時、また風がふわりとそよいだかと思うと、明るい声がその場に降ってきていた。
「たっちゃんじゃない。それに修二さんも。こんなところで、二人がいるなんて珍しいわね」
コツコツとヒールの音を響かせながら、その場に歩み寄ってくる姿。ウェーブのかかった髪をかき上げながら、その相手は二人の顔をじっと見ていた。その視線に達也は思わず顔を真っ赤にし、奥寺は自信たっぷりに相手に手を差し伸ばす。
「玲子さん。今日は、貴女を誘いに来たんですよ。ほら、この前も見事にすっぽかされたから」
「あら、そうだったかしら」
奥寺の言葉に、玲子はクスリと笑うと小首を傾げる。そのまま、彼の差し出す手を取ろうとした玲子の体を、達也がグイッと引き寄せていた。
「たっちゃん、何するのよ!」
ムッとしたような表情で、玲子が達也に噛みついている。しかし、達也はそんなことを気にする様子もなく、彼女の胸元に手を伸ばしていた。
達也の手がはらりと玲子の服の胸元を露わにする。そこには、真っ赤な印が白い肌にくっきりとついている。それを奥寺に見せつけるようにした達也は、先ほどまでとは違った、自信ありげな口調になっていた。
「先輩。僕と玲子さんはこういう関係だから。これ以上、玲子さんにちょっかいかけないでくれませんか?」
そう言うと、達也は玲子を後ろからしっかりと抱きしめ、その首筋に唇を這わせる。それが与える刺激に、玲子は甘い声を漏らしていた。
「たっちゃん……こんなとこで、やめてよ……」
「やめない。玲子さんにも、ちゃんとわかってほしいし」
そう言うと、達也はまた玲子の首筋に口付けを落とす。きつく吸われたそこは、新しい赤い花を開かせる。それをみた奥寺は一瞬、ひきつった表情を浮かべながらも、スッと達也のそばに近寄っていた。
「これがお前なりの宣戦布告かい? 受けて立ってやるよ。とりあえず、第1ラウンドはお前の勝ちってことで」
ぽつりと囁かれたその言葉。それが聞こえているのは、達也だけなのは間違いない。そして、それを耳にした達也は、にやりと口角をあげると、負けるはずがないだろうというような表情を浮かべていた。
~Fin~
もっとも、眼鏡をかけた方の男は、こういうことをするようなタイプにはみえない。しかし、彼はどこか冷たい視線で目の前の男を睨みつけている。そして、その口からは刺々しい声が漏れていた。
「どうして、あなたがここにいるんですか?」
その声に、相手はフンと鼻をならすと軽く肩をゆする。その姿は、自分に絶対の自信をもっているかのよう。そのまま、彼は投げかけられた言葉に応えていた。
「その質問、そっくり返してやろうか? まさか、達也とここで会うとは思わなかったからな」
その声に、達也はキッと唇を噛むと、相手の顔を睨みつける。そんな彼をみた相手の男は、どこか楽しそうな声を出していた。
「そんなに俺と会うのが嫌だったのか?」
「当り前じゃないですか。奥寺先輩と関わりあって、碌なことがあったことはないんですからね」
「そうだったかな?」
達也の言葉に、奥寺はすっとぼけた顔で応えるだけ。そんな彼の様子に、達也は苛々したような調子で言葉を続ける。
「そうですよ。もう、先輩とは会わなくてもすむと思って安心していたのに……」
ぶっきら棒な口調で紡がれる言葉に、奥寺は何も応えようとはしない。それでも、達也の反応がおかしいのか肩を小刻みに揺らしながら笑っている。
そうやって、男が二人で睨み合っている時、また風がふわりとそよいだかと思うと、明るい声がその場に降ってきていた。
「たっちゃんじゃない。それに修二さんも。こんなところで、二人がいるなんて珍しいわね」
コツコツとヒールの音を響かせながら、その場に歩み寄ってくる姿。ウェーブのかかった髪をかき上げながら、その相手は二人の顔をじっと見ていた。その視線に達也は思わず顔を真っ赤にし、奥寺は自信たっぷりに相手に手を差し伸ばす。
「玲子さん。今日は、貴女を誘いに来たんですよ。ほら、この前も見事にすっぽかされたから」
「あら、そうだったかしら」
奥寺の言葉に、玲子はクスリと笑うと小首を傾げる。そのまま、彼の差し出す手を取ろうとした玲子の体を、達也がグイッと引き寄せていた。
「たっちゃん、何するのよ!」
ムッとしたような表情で、玲子が達也に噛みついている。しかし、達也はそんなことを気にする様子もなく、彼女の胸元に手を伸ばしていた。
達也の手がはらりと玲子の服の胸元を露わにする。そこには、真っ赤な印が白い肌にくっきりとついている。それを奥寺に見せつけるようにした達也は、先ほどまでとは違った、自信ありげな口調になっていた。
「先輩。僕と玲子さんはこういう関係だから。これ以上、玲子さんにちょっかいかけないでくれませんか?」
そう言うと、達也は玲子を後ろからしっかりと抱きしめ、その首筋に唇を這わせる。それが与える刺激に、玲子は甘い声を漏らしていた。
「たっちゃん……こんなとこで、やめてよ……」
「やめない。玲子さんにも、ちゃんとわかってほしいし」
そう言うと、達也はまた玲子の首筋に口付けを落とす。きつく吸われたそこは、新しい赤い花を開かせる。それをみた奥寺は一瞬、ひきつった表情を浮かべながらも、スッと達也のそばに近寄っていた。
「これがお前なりの宣戦布告かい? 受けて立ってやるよ。とりあえず、第1ラウンドはお前の勝ちってことで」
ぽつりと囁かれたその言葉。それが聞こえているのは、達也だけなのは間違いない。そして、それを耳にした達也は、にやりと口角をあげると、負けるはずがないだろうというような表情を浮かべていた。
~Fin~
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